宙族の置きお土産

「やぁサトー君、凄まじい戦いぶりだったようだな」


 土でアーマーと服を汚したランドさんがこちらに歩いてくる。

 戦いの余波をまともに食らったって感じだな。


「こっちの被害はありません、そちらは?」

「死亡が2名 腕をもがれたのが一人、負傷者は半分といったところだな」

「支援は必要ですか?」

「いや、こちらでなんとかできる。」


「手ひどくやられましたね」

「うむ」


 振り返ると、キャベツ集落の建物は迫撃砲にやられて穴だらけだ。

 この有様では、しばらく野宿と同じになるな。


「それで、宙族の戦利品だが……」

「連中の残していった武器は、半分の山分けにしましょう」

「助かる」

「いえ。全部は持って帰れないので」


「あとはキミに話がある。今は内容は言えない、内密な話だ……」

「内密な話、ですか。」

「あぁ、君に渡したいものがある。宙族から戦利品を拾い終わったら、私のところに来てくれ」

「……わかりました」


 これは何か頼み事をする気だろうな。

 いくらなんでも僕らだけで宙族を倒しすぎたか?


 っても、あの状況で手を抜くっていうのは、土台無理だしなぁ……。


 地面に転がっている連中をみる。

 奴らは結構な量の重火器を持ち込んでいた。

 

 ガトリングガンが一番多く、その次は機関砲みたいな単銃身の武器だ。


 この武器は生身の人間がそのまま使うのには重すぎて無理がある。

 だけど、銃架か何かに乗せて使えば役に立つだろう。


 僕らが使っている武器より宙族の武器のほうが近代的だ。

 性能もずっと優れている。宙族たちは中々良いお届けものをしてくれたな。


「みんな、連中から使える装備を剥ごう」

「キュイ!!」

「よしきた、戦いの後はこれが一番楽しいんだ!」


 なんかギリーはこういうのに妙に馴染んでるな。

 やっぱり砂エルフってそういうのだったんじゃ……?


「クロ―、あのバリバリ雷みたいな音がする奴もらっていこうぜ―」

「待ちなさいハク、サトーさんの言うことを聞かないと……!」

「えー?」

「ですわよね? サトーさん!」

「え? まぁうん、そうだね……」


 僕は急に話を振られて困惑してしまった。


 まあ、それならそれでこっちで選ぶとしよう。

 皆が皆、同じ武器を選んでも困るし。


 ガトリングガンはまず持っていくとして……。

 うん! この「スラグカノン」にするか。


 ガトリングガンは大勢相手に使うぶんにはいいけど、貫通力に不安が残る。現にハクが奇襲を仕掛ける時、盾として使ったカスケットの装甲を貫けていない。


 だけど、このスラグカノンは違う。

 スラグカノンは、カスケットのような対パワーアーマー兵器として定評がある。


 この武器は弾丸の尾部に埋め込まれた特殊な金属を蒸発させ、その熱量とガスで重い弾体を超高速で打ち出す兵器だ。


 そしてコイツはちょっとユニークな特性を持っている。

 装甲を貫通するんじゃなくて、装甲の上からぶん殴るのが目的の武器なのだ。


 パワーアーマーは頑丈だが、中に入っている人間はそうでもない。


 頑丈なアーマーの中に入っていても、人間は生身のままだ。そいつの脳や内蔵を、衝撃でグシャグシャにして殺傷するのを狙った武器。それがコイツだ。


 今後、僕たちがパワーアーマーを着込んだ相手と戦う可能性は多いにある。


 戦って分かったが、僕らが持っている今の武器では、アーマーを着込んだ宙族とまともに戦えない。予備も含め、2つは持っていくべきだろう。


「ガトリングガンを3つ、スラグカノンを2つ持っていこう」

「キュイ!!」

「ん、どうした、ポチ?」


 ポチがカスケットの前で体を揺すって、何かの意思表示をしている。

 ……うん?


「もしかして、カスケットの足や腕がほしいのかい?」

「プイ!」 

「なるほど……やってみるか」


 通常のパワーアーマーと違って、カスケットの手足は完全なロボットのものだ。

 つまり、ポチにも使えるということだ。


 僕は手足の損傷が少ないカスケットを見つくろうと、それをポチに与えてみた。


 するとポチは、いつも建物を作るときみたいに作業を始める。

 マニュピレーターからバチバチと火花を出し、解体し出したのだ。


「キュイキュイ……キューイ!」

「あと2体? 足だけ無事でもいいのかい?」

「プイ!」


 ポチは何をしたいのか?

 それがハッキリしないのが気がかりだったが、彼なら悪いことはしないだろうと思い、地面に転がっているカスケットの残骸を僕はポチに与え続けた。


 すると、段々と「それ」が形になってきた。


「これは……」

「キュイ!」

「これ、多脚戦車じゃないか!」

「プイ~♪」


 ポチはカスケットのパーツを流用して、6つの足、2本の腕が前部に生えたクモ型のマシンを作り上げた。


 大きさは人間ベースのパーツをつなげているので、そこまで大きくない。

 軽自動車くらいのサイズで、背中には結構な広さがあり、4人は乗れそうだ。


「キュイ!」

「ん、ここに載せろって?」


 見ると、多脚戦車の前の方には丁度ポチが乗れそうな小さなスペースがある。

 ここに自分を載せろと言っているようだ。


「あ、なんかすっごいちょうどいいサイズ感」

「プイ!」


 ポチ自ら作っただけあって、ぴったりだ。戦車に乗り込んだポチは、戦車の足を動かしてみせ、前にある手を僕の方へ差し伸ばしてきた。


「お手ってこと?」

『キュイ!』

「でかした!!」<パシンッ!>

『キュイキューイ♪』


 まさか宙族のアーマーがこんな戦車になるとは思わなかった。

 ポチMK2の背中には、重火器をマウントできそうな部分もある。


 これはひょっとしなくても、すごい戦力アップになるのでは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る