キャベツ集落の戦い③
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「よしきた、どっこいしょ!」
<ドゴォォォォンッ!>
「準備できましたわ!」
「ほいきた!」
<ズガァァァァァン!!>
「よし、もういっちょ!!」
「…………大変! もうバクダンがありませんわ!」
「えーっ、まじー?」
頼みの綱だったハクとクロの爆弾矢が、ついに品切れになった。
クソッ! ここまでか……!
僕たちの銃はカスケットの装甲を打ち破れない。
このままだと、集落の中に突入されてしまう。
敵もだいぶ近くなってきた。
――あ、こっちに向いてる宙族の手元が光った!
「みんな伏せろ!」
<ドカカカカカカカッ!!!>
(ついに敵の射程内に入ったか!!)
宙族のもっていたガトリングガンが火を吹いた。
銃身から吐き出された無数の弾丸が、僕たちが隠れていた壁を襲う。
飛来する鉛の弾体が壁をうがち、空気がビリビリと震えた。
「うひょー! すげーな!」
銃眼を通って、部屋の中にまで弾丸が入り込んでいる。
大型クロスボウはさっきの一撃で穴だらけになって弦も切れていた。
これじゃあもう使えないな。
「このまま撃たれ続けたら、そのうち壁が崩れるね」
「こっちの弾は通用しないっていうのにねぇ……」
起き上がるために地面に手をついたら、何かが僕の手に触れた。
灰色の筒に白いマーキング。
(これは……煙幕手榴弾?)
さっきの射撃の衝撃で、弾の入った箱がひっくり返っている。
そこから転がり落ちてきたのか。
「よし、これなら……ッ!」
僕は筒を握りしめ、ハクとクロにこれからすることを説明した。
◆◆◆
「ヌハハ! あの爆発にはちと驚いたが……」
「ウハハ! 射程に入ればこっちのもんだ!」
「ゲハハ! 特に言うこともないから笑っておくぜ!」
ウハハ! 空のお星様になったガハルトの事は残念だった。
ま、アイツは口が臭かったから別にいいや。
ウォッカを飲んだ後に歯磨きをしないから、天罰がくだったのだろう。
兄弟たちは手元のガトリングガンの弾倉を交換する。
次の射撃で壁を破壊して、中の奴らを仕留められるだろう。
ん?
墜落者の防衛施設から白煙が立ち上っている。
火事では……ないな。
俺たちは焼夷弾を使ってない、高いし。
となると、煙幕か。
「ヌハハ! 見ろよ兄弟、墜落者の連中ビビってるぞ」
「ウハハ! 煙幕だと? 隠れて逃げるつもりか!」
「ゲハハ! 言おうとしたこと全部言わないで」
<カン! ……コロコロ ブシュゥ!!!>
ん――?
連中、こっちにも煙幕を投げ込んできやがったな。
どうやら本気で逃げるつもりみたいだ。
白い煙が立ち込めて何も見えない。
まるで牛乳の中に飛び込んだみたいだ。
まいったな。
このままだと、墜落者の奴らに逃げられる。
必要なのは壁や家でなく、奴らの命だ。
墜落者の首を取らんと、金にはならんというのに、クソッ!
<バサッ!! ズシン!!>
ん~? 羽音と共に地面が揺れた気がする。
きっと幻聴と目まいだな。
いかんなー。
戦闘の前に興奮剤を食いすぎたみたいだ。
「ウハハ! マジで何も見えんな!」
「ゲハハ! ……ん? ヌハルトはどうした?」
「ウハハ! わからん、自分の足元も見えねぇ」
「ゲハハ! ウ……ゲハッ!」
「ウハハ! ゲハルト…………?」
声をかけるが、ゲハルトとヌハルトからの返事がない。
何かとても嫌な予感がする。
急いでガトリングガンの装填を終えよう。
弾の入っていない空箱を地面に落とし、新しい箱に取り替える。そして次に手元のスイッチを押して、モーターで弾を送り込む。
(何かがおかしい)
「ウハハ…… ゲハルト! ヌハルト! 返事をしろ!!」
さっきから妙な寒気がする。
まるで俺の背中に氷を入れられたみたいだ。
おれは深呼吸して、ガトリングガンの銃身を煙の中を探るように向けて回った。
間違いない。煙の中に何かがいる。
その時、俺の目の前の白煙が揺らいだ。
「いたぞ!! いたぞぉぉぉぉ!!!」
<ヴイィィィィィィィン!!!!>
俺は恐怖にかられ、目の前に向かってガトリングガンのトリガーを引いた。
人間をミンチにする、3000発の鉛弾の嵐が白煙の中に叩き込まれる。
これで死なない化け物はいない!!
「――殺ったぜ!!! ……な、バカな!」
白煙の中から、穴だらけになったカスケットのアーマーが現れる。
アーマーの肩には「G」の文字。ゲハルトのものだ。
俺が撃っていたのはゲハルトだった……?
「ゲハルト、お前何を――」
おかしい、ゲハルトの足が宙に浮いている。
見ると奴は背中を何かに掴まれている。
(あ、あれは……ヒィッ!!)
「あぶねーあぶねー。これが頑丈で助かったぜ―!」
俺が最後に見たのは、白い鱗に覆われた尻尾だった。
それが顔面に叩きつけられ、俺は意識を失った。
◆◆◆
<ブォォォォォ!!!>
「角笛の音だ、撤退だ―!!」
「逃げろー!!」
敵のリーダーは角笛をかき鳴らし、戦場から撤退を始めた。
戦いが始まってから、まだ30分も経っていない。
にも関わらず、宙族はこちらに突撃させた兵士の半分を失った。
これに大きなショックを受けて、戦いを諦めたようだ。
後ろを見せたとはいえ、さすがのカスケットなので背中を撃っても意味がない。
逃げ出す宙族を倒すことは出来なかった。
「逃げられちゃいましたね」
「よくないね。次はもっと良い装備で来るかもしれないよ」
「いやだなぁ……」
「おーサトー! 鉄頭を3つやっつけたぞ!」
「くっ! 私は2つ……ハクに負けましたわ!」
うわー。さすが蛮族。
カスケットのヘルメット(中身入り)を持ってハクとクロが自慢している。
さて、宙族の撃破スコアは爆発した矢で5体。
ハクとクロが煙幕に紛れた白兵戦で5体。
計10体。宙族の全戦力は20体くらいだったから……。
敵の半分を僕らだけでやっつけた計算になる。
というか……向かって右の迎撃エリア、キャベツ集落の住人が守っていた側を見ると、あちらには宙族の死体が一つもない。
カスケットを倒せたの、僕らだけじゃん!!
う、キャベツ集落の住人からの視線が痛い。
これはなんか……厄介なことになりそうな予感がするぞ。
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