キャベツ集落の戦い①

<ズガァン!!!><ドゴォォン!!!>


 大音量はビリビリと建物を揺らし、天井からチリが降ってくる。

 何がはじまったんだ?!


「これはいけないね……迫撃砲だよ」

迫撃砲はくげきほう?」


「地面に当たると爆発する弾を発射する大砲だよ。弾が大きく半円の弧を描いて飛んでくるから、銃弾を守るための壁を超えて、頭の上に落ちてくるのさ」


「それじゃあ、ここも危険?」


「サトーにしちゃ勘がいいね。迫撃砲は正確な狙いができないから、人よりも建物を狙うんだ。はやく外に出な!」


「みんな外に出るんだ!」

「さぁ早く!」


 ランドさんと僕の声が重なる。

 外に出るといくつかの建物に砲弾が命中して、屋根と壁が崩れていた。


(幸い火は出ていないけど、酷い有様だ)


 砲弾が地面をうがち、掘り起こしている。

 これじゃまるで戦争映画だ。

 まさか自分がその中の登場人物になるとは思わなかったけど!


 走っていると、ランドさんを見つけた住民が彼に向かって叫ぶ。


「ギルドマスター! 襲撃です!!」

「わかっている!! 状況はどうなってる!」


「砲撃です! 北から砲撃音が聞こえました!」

「よし、敵はそっちから来るぞ、集落の北側につけ!」

「ハッ!」


「弾を使い切ったら敵の本隊がすぐに来るぞ。弾幕の切れ目を待て!」


「サトー、これじゃ抜け出すどころじゃないよ」

「そうですね、戦いますか」

「お、イクサかー?」


「ランドさん、僕らも戦います!」

「助かる! 北の壁、銃座のある向かって左側についてくれ!」

「はい!」

「それと、配置位置で固まるなよ、まとめてやられるぞ!」


 僕らはまばらな砲撃の下、持ち場へ走る。

 だが、僕らが配置につくとすでに砲撃は止んでいた。


 敵はもうすぐ来るな。しかし……


「銃座ってこれかい?」

「まさか中世の大型ボウガンとは思いませんでしたね」


 銃座は機関銃じゃなくって、まさかのボウガンだった。

 ガンはガンでもボウガンってか?

 銃じゃないじゃん!! うそつき!!


「面白そうだなー! つかっていいか?」

「ま、まあいいかな?」


「ハクが使うと壊しそうですわ、弓をひくのは私がしますわ」

「じゃあ俺は狙いをつけるぜ―!」


「弓をひくのは多分そこのハンドルを……」


 僕がこのボウガンの正しい使い方を説明しようとしたときだった。

 クロは普通に素手でグイっと弓を引いてげんを固定した。


 あの……それ普通はクレーンみたいなのを使うんですけど?

 そのハンドルをくるくる回すんですよ?


「ちょっと軽いですわね。弦をもっと強めましょう」

「ソウダネー。モウ好キニシテイイヨ」


「――ッ!」


 地平線の向こうに煙幕が上がった。

 おそらく、来る。


 僕はいつも使っているマシンガンを構える。


「マジかよ……」


 煙の中から現れたのは、パワードスーツを着込んだ宙族だった。

 しかもその数は20人はいる。


 あのタイプのスーツは、「カスケット」か。


 宙族が着ている、いや、スーツは見たことがある。

 以前、報道番組か何かで話題になっていたからだ。


 カスケット、という言葉の意味は、小箱に入れる、だ。


 つまりあのスーツは、人間の四肢を切り取り、頭と胴体だけを入れているのだ。

 もちろん、スーツの機能が停止すると、中の人間は死亡する。


 自分の四肢を切り取ってまで、あのスーツを使いたいと思う人間はいない。

 

 自爆装置のように装備を破壊せず、それでいて鹵獲を防ぐ画期的なシステム。

 そういった触れ込みで導入され……世論が大炎上して、まもなく廃止された。

 

 問題がありすぎて廃止されたはずのスーツ。

 なんでそれがここに……?


 ――ハッ!

 ふと、僕の頭にいつかのランドさんの声がよみがえった。


((企業は惑星ナーロウに違法な産業廃棄物ゴミ装備を投下している))


 そ~~~~~きたかぁぁぁぁぁ!!!!!?????


「こりゃ、きびしい戦いになるね」

「生きて帰れますかね?」

「勝ちゃそうなるよ」

「そりゃそうですけど……。」

「後ろに弾の箱がある。銃身が溶けるまで撃ちまくりな!」


 僕は目の前にある小さな穴に銃身を突っ込むと、機械と人が混ざりあった怪物に向けて、マシンガンの引き金を引いた。

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