第二の仲間?


 後日、僕が砂エルフに投与した下剤は大惨事を引き起こした。

 いやあ、口にするのも恐ろしい出来事だった……。


「くっ殺せ!!」

「うん、まあ……気持ちはわからないでもないかな」


 どうやら彼女のプライドはあの出来事によってバキバキになったらしい。

 流石の僕も、うん。ちょっと気の毒に思った。


「まあ、生命があったから良かったじゃない」

「……ふん、助けには感謝する。だが、何のつもりだい?」

「何のつもりっていわれてもなぁ、肉食獣のエサにしたくなかったくらい?」

「……奴隷にして売り飛ばすつもりか? それとも心臓を抜き出すかい?」

「そんなことしないよ」


 この砂エルフ、だいぶ人間不信と言うか、考え方が世紀末だなぁ。

 ニートピアには臓器を取り出して保存するような設備もないし、奴隷を働かせる職場自体がないからなぁ。しない、というかできないってのが正しいか。


「お人好しめ。……砂エルフが無礼者と思われたくない。恩義の分は働こう」

「えぇ?」


 エルフは病み上がりにも関わらず立ち上がると「何か仕事はないか?」なんて言い出した。人手が増えるのは嬉しいけど、任せて大丈夫かな?


 来ていきなりの人をニートピアに受け入れるのは、ちょっと不安がある。

 それに、なにせカツアゲされた人だし。

 でも恩義とか何とか言ってるし、一応信用してもいいのかな?


「ひとまず客人用の部屋を作ってるところだったんだ」

「なるほど、建築か。私には出来ない」


 あまりにも堂々と「出来ない」と言う姿。いっそ清々しいなあ。


「じゃあ、材料の草刈りをお願いできる?」

「心得たよ」


 僕が作業を頼むと、彼女は颯爽と風を切って歩き、草を引っこ抜き始めた。

 流石に現地人と言ったところか、僕がやるより手早かった。


 うーむ、だがしかし。なんというか、うーん。


 この砂エルフのギリーさん、言い回しとか立ち居振る舞いが「女子力」っていうより「武士力」って感じだな。


 これはこれで凛としていてかっこいい。だけど、僕の持ってるナーロッパ物語のエルフのイメージとはちょっとちがうな。


 もっとこう、しゃなりしゃなりっていう感じ?

 エルフっていうと、草をなで、その上で本を読んだりするイメージだ。目の前でやってるみたいに、無頓着に草をブチブチちぎるイメージはなかった。


 ま、それをいうのは今さらか。


 惑星ナーロウはナーロッパ、草や森の多い温帯地域をモデルにしているはずだ。

 だけど、僕が今いるこの場所「ニートピア」と周辺はガチのサバンナ地帯だ。

 なので多少の違いには目をつぶろう。きっと何か深い理由があるに違いない。

 無いかも知れないけど。


「ところで、このコロニーの名は?」

「ニートピア」

「聞き慣れない響きだね」

「僕の住んでた国の言葉でさ」

「そうか、お前は墜落者だったな。墜落者ギルドの連中はいつもよくわからない、不思議なことばかり言うよ」

「ふーん、例えば?」

「そうだな、例えばあれだ。すてぇたすおーぷんとかだ」

「あー」


 ギリーの話を聞いてわかったが、どうやら墜落者の中には、この世界を現実のものとは思わず、空想の世界に入り込んだと勘違いした者もいるようだ。


 そりゃそうだよね。

 墜落した先が異世界だった。ナーロッパ物語なら、実にありがちな始まり方だ。


 あ、そうだ。せっかく現地人と落ち着いて話ができる機会を得られたんだ、もっとこの辺境世界について色々と聞いてみるか。


「そうだ、ギリー……さん、もっとこの星ナーロウについて教えてくれないかな? 僕はまだ、この辺の事に詳しくないんだ。」

「ギリーでいいよ。一応言っておくが、アンタが墜落者ギルドで知り得る以上のことは教えらないと思うけどね?」

「それなんだけど、僕はすぐにこのニートピアに送られたから、墜落者ギルドのマスターにも詳しいことは聞いてないんだ」

「なるほど、よく今まで生きてたね? 結構厄介な連中がうろついてるのに」

「まあ、うん。ゴブリンとは出会ったよ」

「尻の毛までむしられたろ?」

「いや、なんとか追い返せたよ」

「ほう……アンタ、その見た目に似合わず、意外と強いんだね?」


 おっと、なんか砂エルフの目の色が変わったぞ?

 不味い、バトルジャンキーなのかこいつ?!

 手合わせとか言い出したら死にそうだ。誤解を解いておかないと……!!


「いやいや、やっつけたのは僕じゃないよ。ポチのおかげだよ。僕はその、見てただけだから」

「ポチ……? ああ、あのキュイキュイ鳴く機械?」

「そうそう」

「なんだ、機械か……」


 ギリーさんは大きなため息を付いて、すごいガッカリしてる風だ。

 うーん、この人らの価値観がよくわからないぞ。


 なんだろうな、「鉄は血に打ち勝つぞ!」みたいな感じ?

 機械より生身の体の方が上、そんな考えをもっているのかもしれない。


「残念そうですね?」

「機械なら人に勝てて当たり前だからね。――血肉の通わない者と競って何になるのさ」


 案の定、独特の感性をお持ちのようで。


 彼女個人の考えなのか、それとも砂エルフ共通の考えなのかはわからない。

 でもとにかく、彼女にはそういう考えがあるってことはわかった。


「そうです、そのゴブリンの事とか、この辺のことを教えてください」

「ああそうだね、悪い悪い。始めに言っておくけど、私は部族の語り部じゃないからね。少しまとまりのない話になるけど、いいね?」

「はい、お願いします」

「んじゃ、ちょっくら語るかね――」


――――――――

作者注釈

キャラ忘れてたんでセリフを修正。

アカン、適当やってるのがバレるッ!

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