第33話:馬車が足りないです。

盗賊団のアジトを壊滅させたはいいが、人質の数が多くて困っていた。


以前転移を使った時は一人だけだったので、40人くらいを一気に運ぶのは無理そうなんだよね…


「うーん…」


「どうしたの?優希」


「この人数を運ぶのに、どうしようかと…」


「転移は…こんな大人数試してないものね…」


「そうなんだよ、失敗したらどうなるかわからないし…」


「それだと心配ねぇ…」


「それなら、王城に飛べばいい」


簡易ベッド用の木材を切っていたユフィが戻ってくる。


「ユフィ?準備は終わったの?」


「ん、木の板沢山作った」


「ありがとう、それじゃあ並べちゃおうか」


「ん、じゃあ私土台作る」


「私も、手伝います」


「ありがとうヒカリ、助かる」


「じゃあ私、先に作ってるわ」


「ありがとう耀」


耀は手を振りながら、救護者のベッド作りへ向かって行った


「それで、王城って?」


「王城なら、馬も馬車もある、近衛から街の衛兵が使う宿舎もある」


「そうか、ここと王城なら、馬車と馬だけだし移動は楽か」


「ん、ユウキの魔力で、その量なら帰って来れる」


「そこまでわかるの?」


「勘」


「勘かぁ」


「そう」


「とりあえず、行ってくるよ」


「あっ、ユウキ」


「どした?」


「メアリーを、連れてきて。実験型の魔法鎧、使ってもらいたい」


「了解、誰か交代で連れて行くかなぁ。それか神様起きてないかな?」


エアリス達に何かあった時に転移の目印が必要だしなぁ…


「起きてるよー」


そう考えていたら何もない空間から、にゅっと神様が出てきた。


「あ、起きたんですね」


「神様、おはよ」


「おはよーユフィちゃん!」


「神様、良く寝れました?」


「うん、すっきりー。ありがとね、リビング借りちゃって」


「まぁ半分くらい、巴ちゃんがやってくれたからね。俺は何もしてないよ」


「それでもだよー。それでどうしたの?」


「あぁ、新しいこの指輪が欲しくて」


右手に着けた指輪を見せる、するとユフィが目をキラキラさせる。


「あぁ、それねー、何個欲しいの?」


「エアリス、ユフィ、ミュリ、ユキ…とりあえず4つですね」


「ちょっと待ってて…作るから1時間くらいしたら教えて~」


「わかりました、だってユフィ」


「むぅ…後ですぐ頂戴」


「ははは…わかったよ」


「ユウキの分もやっとく」


「ありがとうユフィ。それじゃ、行ってくるよ」


「ん、いってらっしゃい」


「いってらっしゃーい」


二人に見送られ、メアリーの魔力を頼りに転移していく。


◇◆◇◆◇◆◇◆


景色が変わり、降り立つと客間だった。


しかもメアリーの目の前だったので滅茶苦茶びっくりした顔している。


「優希さン…いきなり現れないで下さイ。とても驚きまス」


「あーゴメン…ちょっと急用で」


「そうだったんですカ。えっと用事は私ですカ?それともエアリスさんですカ?」


「二人共だね」


「わかりましタ、それでしたラ。行きましょウ、私はこのまま動けますのデ」


「話が早くて助かるよ」


そのままメアリーがベルを鳴らすと、懐かしい顔ぶれがやって来た。


「どうなさいましたか?メアリーさ……勇者様!?」


「あ、お久しぶりです、メイド長。戻ってたんですね」


「えぇ、昨日。って、いくら勇者様でも突然女性の部屋に侵入するのは、少し倒錯的過ぎませんか?、それにそういった事なら姫様へやってもらわないと……」


「あーあはは…そのエアリスにも用事がありまして、結構至急の」


「わかりました、ご案内したいのですが。姫様は今、湯浴みをされておりまして…」


「そうですか…そうしたら。先にメイド長に話した方が良いかもですね」


「よろしいので?」


「大丈夫ですよ、そこまで聞かせられない話じゃないので」


「かしこまりました」


話の切れたタイミングでメアリーがお茶とお茶菓子を出してくる。


「お茶でス」


「ありがとう、メアリー」


「メアリー様、私まで。よろしいのでしょうか?」


「旦那様にだけお出しするのも不自然ですシ、せっかくなラ、異世界のお茶でもお飲みいただければと思いましテ」


「そうだったのですね、ありがとうございます」


そう言って皆で飲む


「あれ?いつもと味が違う…」


「新しい茶葉を持ってきましテ、ヌワラエリヤのストレートなのですガ、残っていた羊羹に合いますのでお出ししましタ」


「あぁ、だから和菓子があるのか」


確かに羊羹と食べると、程よい渋みとスッキリする後味がマッチして美味しい。


「美味しいよ、メアリー」


「そうですね、このヨウカンでしたか?保存が効くようにかなり甘めですが。この甘さと滑らかさが程よくお茶と合う様に流れていきます。このレベルでお茶を入れられるなら即戦力ですね、どうです?私の元で働きませんか?」


「メイド長、勘弁してくださいよ…これでもメアリーは俺の嫁の1人ですよ」


そう言うとメイド長の眼鏡にひびが入った…アレって、確かクリスタルタートルの甲殻だよな…相当硬いはずなんだけど…


「よっ…嫁ですか…しかも複数居る様な発言が…」


「はい、今は5人ですね…」


「ご…五人…」


あ、そういえばユフィはこのまま着いて来るんだったな…まぁいいか。


「姫様…お労しや…」


「それで本題に移っても大丈夫ですか?」


「はい、すみません。それで、火急の要件とは?」


「えっとですね、ミュリの魔法鎧を作ってる方居ますよね?」


「あぁ、ヒナギク様ですね。稀代の名工として有名ですが、その方がどうかなさいました?」


「えっと、盗賊に攫われまして、それが昨日の事なんですが」


「つまり増援が欲しいという事ですか?」


「あぁ、それはもう終わったんですよ、頭目も倒して壊滅させました」


「なっ……お早いですね…」


「えぇ…弱かったので」


「そうですと…恐らく人質の輸送に、馬車が足りないという事ですかね?」


「正解です…流石、影師団の団長さん」


「やめてくださいよ、普段はメイドなんですから」


「すみません、それでそれをエアリスに伝えて欲しいんです」


「かしこまりました、そうなりますと姫様に連絡をさせてもらいつつ馬車と馬を、ご用意させていただきます」


「ありがとうございます」


「それで、輸送はどうなされますか?少なくともここからだと工房都市まで1日半はかかりますよ?」


「それでしたら問題ないです、空間収納アイテムボックスって魔法を使える様になりまして…馬車数台なら余裕で入ります」


目の前でクッションを空間収納に仕舞うとメイド長はびっくりしている。


「驚きました…これはメイドに欲しい能力ですね…」


「あはは…でも原理は曖昧なんですよ…俺も良くわかってないです」


「そうなんですね…残念です。要件は了承しましたのでこちらで書類を作ります、それと荷馬車の手配と馬を手配しますね」


「ありがとうございます」


「そうしましたらこちらでお待ちいただければ、エアリス様と伺います」


「そうしたら、馬車を受け取るついでに訓練場まで行きますよ、どのくらいの時間で行けばいいですか?」


「そうですね…30分はあれば大丈夫です、姫様も勇者様が来たら飛び出してくるでしょうし、では失礼します」


そう言ってメイド長は部屋から出て行った。


「さて…暇になったなぁ…」




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あとがき


作者です。

そろそろ久墨達に会いに行く時間軸が重なりますね。

次章の内容…なんとなくは固めてあります。


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