第10話 情報収集第二PHASE 共有


 そしてここでも俺はさよに負けてしまった。

 街を歩いて気付いたことや気になったこと、なによりこれは、と思うことがあり過ぎて何から話せばいいか頭の中で迷っていると、


「刹那様。ここは私にお任せください」


 などと、めちゃくちゃ格好いいことを俺の耳元で囁いてきたのだ。

 ここまで来ると逆に大人げなくてもいい。

 そこまで言うならビシッと言ってもらおうかと、ムキになった俺はさよだけに聞こえる声で語りかける。


「できるのか?」


 プレッシャーをかけてビビらせようとした陳腐な作戦は秒で破綻する。


「お任せください」


「あっ、はい。ではお願いします」


 いやあああああああああああ!!!

 心の中はもうぐちゃぐちゃである。

 なんでこんなできる年下の女の子と比較されにゃいけにゃいのか!

 とても不公平過ぎる。神様のやろう人生パラメータのステータスどう見ても振り間違えすぎだろぉぉぉぉぉ!!!!!

 など、到底恐れ多くて口にはできないのでせめて心の中で発狂させておく。

 その間にさよが唯に要点を抑えて丁寧に説明している。


「はぁ~、なるほどね。野田家の人間も変装して街に居たわけね。それにしてもよく気付いたわね」


「はい。尾行がとても下手でしたので恐らく分家の下っ端かと思います」


「そのまま気付いていながら泳がせて様子を見ていたと?」


「はい。全ては刹那様のご指示です。敵を泳がせ逆に嘘の情報を掴ませ、こちらは敵の狙いを探る、という」


 俺は突然の展開に口が空いて塞がらなくなった。

 もう、ここまで来たら、認めますとも。


「そ、そうだったな」


 こんな俺にも華を持たせてくれるさよ相手じゃ俺はちっぽけな存在だと。

 全部気付いたのはさよだし、どうするかの最終判断を煽ってきたことは間違いないが、こうした方が良いというアドバイスまでしてくれたのは事実で俺はその意見に頷いていただけ。

 本当によくできた人だと思う。


 逆に最後は尾行を撒いてここに戻って来たのだ。

 文句のつけようがない。


「刹那に聞くけど、分家の人間を泳がせて結局この後どうするつもりなの?」


「ふっ、愚問ですな」


 俺はチラッとヘルプミーとアイコンタクトで助けを求める。

 すると、ニコッと満面の笑みでNOと突き返されてしまった。

 気が利くのは事実だが、最後は自分で決めろとまぁお厳しい副支配人様であった。


 確かに、これは俺や唯の問題であってさよの問題じゃない。


 だったら最後にどうするかを決めるのは俺や唯じゃないといけない。

 俺は少し考えて自分の意見を素直にぶつけることにした。


「まずは分家の龍一。それが終わったら主犯格の下種野郎共を引きずりだしたいと思っています」


「分家の者がやられたとなったら本家が動く。それを利用してあの二人を連れ出すつもりね。でも問題が一つあるわ」


「問題ですか?」


「えぇ。刹那は知っていると思うけど私の家宝は今向こうの手にある。それをもしどちらかが持っていた場合、誰が相手にできるかということよ」


「つまりSランク魔法師と対等もしくはそれに近い者が必要というわけですか?」


「そうゆうことになるわね。でもまぁ……」


 唯は俺とさよを交互に見て、言葉を続ける。


「それを考えるのは分家を始末してからでも良さそうね。ペンダントが実は分家の手に渡っていて本家には黙っているなんて線も十分に考えられるし」


 そもそも盗まれているのかすら、今はハッキリとしない状態。

 だったら下手に考え込まない方がいい時もあるのだろう。

 当然リスクとして考えないといけないだろうが、唯の言葉を聞く限りだが、何か考えがありそうな雰囲気がするのも事実。

 ただ少し引っかかることがあるとすれば、唯の目が自信に満ちているということだ。


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