第37話 少年の行方
翌日にはヘルスメンはラエルの村にいた。
カートキリアの西部に位置する人口五十人にも満たない小さな村だ。
ヘルスメンは以前から度々この村に立ち寄っていた。
ここで採れる野菜の味が良いので近くを通る際には飯を貰いに来るのだ。
物乞いのようなものだが、村人との関係は良好だった。
あちこち飛び回っていたため、二年ぶりの訪問である。
日照りの影響で不作と聞いている。
今までの礼も兼ねて差し入れを用意した。
村に着いてすぐ、様子が違う事はわかった。
真昼間だというのに誰一人外にいない。
畑には夏野菜が実り始めている。
管理されていることから人がいないわけではなさそうだ。
家のドアは閉ざされ、日中にもかかわらず窓はカーテンで閉ざされ中の様子が伺えない。
見慣れない藍色の旗がそこかしこに立てられていた。
ヘルスメンは知人の家のドアを叩いた。
「俺だ、
呼びかけに反応があり、扉が開く。
「…なんだ、風俗大好きヘルさんか」
ようやく村人とコンタクトが取れた。
彼女はタミィと言う未亡人だった。
ドアの隙間から顔だけ出し、辺りを警戒するように見回す。
「…あんた一人かい?」
「いつも一人さ。
愛馬一匹、人ひとり。
知ってるだろ?」
入んな、と言ってタミィはヘルスメンを中に招いた。
家には彼女以外だれもいない。
以前は朗らかでお喋りだったタミィの表情は暗く、口数も少なかった。
「息子はどうした?」
「…出てったよ」
かつてこの家にはタミィの一人息子ジョゼが暮らしていた。
歳は確か前に会った時から計算すると十五、六のはず。
畑仕事を積極的に手伝う、母親想いの真面目な少年だった。
「話しなよ、相談に乗るぜ」
ジョゼはどこへ行ったのか。
ヘルスメンには心当たりがあったが、自分から切り出す事はせずにタミィから話すよう促した。
「あの子は…盗賊になった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます