第61話のおまけSS 大刀の名は



 カリンがダンジョン崩落に巻き込まれた人々を無事にダンジョンの外まで送り届けて一段落していたとき。


 色々な意味で大盛り上がりなコメント欄に、ふとこんな質問が書き込まれた。


〝そういえばカリンお嬢様、さっき使ってた大きな刀、はじめて見ましたけどこちらはなにか名前はありますの?〟


「あ、言われてみればなにも説明してなかったですわね」


 錯乱した光姫をなだめたり救助隊に被災者を引き渡したりでばたばたしていたカリンは改めてアイテムボックスからその自慢の一振りを取り出す。


「実はしばし名前を決めあぐねていたのですけど、先ほどのアレコレでちょうど良い名前を思いついたところですの! ちょっと造形にこだわって入れてみた刃紋、巨大な刀身、ダンジョン壁を切り取って天井や壁の中をすいすい進んでいける性能――そう、その見た目と能力はまさに砂漠の地面を自在に掘り進むというあの未確認生物のような――」


 とカリンは少しもったいぶるように語り、


「というわけで、この子の名前は「名刀モンゴリアンデスワーム」ちゃんですわー!」


 

〝は?〟

〝は?〟

〝は?〟

〝おハーブ〟

〝ダッッッッッッッッッッ!?〟

〝いやちょっと待ってくださいましカリンお嬢様!? ちゅぱかぶらといいモンゴリアンデスワームといいなんなんですのそのネーミング!? UMA縛りでもしてますの!?〟

〝なんであんなヤバい性能と伝説級の活躍した刀にそんな名前をつけられるんですかね……〟

〝ダンジョンアライブを100回くらい見直してきてくださいます!?〟

〝そこはせめて壁内潜行能力持ってたワイアームとかから名前をとってくださいまし!〟

〝ああ、そっか……モンゴリアン「ですわ」ームってことか……ならしょうがないな……〟

〝え、このネーミングそういうことですの!?〟

〝カリンお嬢様の持つ装備として意外とちゃんと考えられていた……?〟

〝おい騙されるなお前ら! 偶然だ偶然! カリンお嬢様の顔見てみろ! 作者の人そこまで考えてないと思うよ、って顔してるぞ!〟


 ¥30000

 カリンお嬢様マジで装備の命名権を売ってくださいましいいいいいいいいいい!


〝命名権を売ってほしさにスパチャするニキまたおって草〟

〝しかも前より金額増えてておハーブ〟

〝いや気持ちはわかるよ……ちゃんとした名前つけられるならわたくしも万札積みますもの〟

〝わたくしも〟

〝わたくしもですわー!〟

〝なあ……これクラファンしたら結構な額が集まるのではなくて?〟

〝あ、それいいですわね。500万達成したらカリンお嬢様に命名権譲渡してもらって金出したやつの多数決で最終決定するとか〟

〝クラファン!? やるなら3万くらい普通に出しますわよ!?〟

〝わたくしも!〟

〝わたくしも一口乗りますわー!〟



「!? え、ちょっ、なんなんですの!? しませんわよクラファンなんて!?」


 突如コメント欄ではじまった謎の流れにカリンが慌てて口を挟む。


「そもそもそんな大金ぶっ込まれても心臓もちませんわ!? ちょっ、ダメですの! クラファンなんて絶対やりませんの! この子はわたくしが作ったんですのよ!? 命名権はわたくしのものですわ!? この子はモンゴリアンデスワームちゃんで決定でしてよー!」



〝なんか親権争いみたいになってておハーブ〟


 ――と、そんなこんなで。


 カリンが新たに生み出した大刀の名前は賛成2:反対多数のなかチャンネル主の強権発動で「モンゴリアンデスワーム」に決定。


 ちなみに光姫は「カリンお嬢様のクソダサネーミングセンスも可愛くて素敵です!」と内心で絶賛していたのだが……フィストファックの件があるのでいったん自重し、搬送先の病院からこっそり賛成コメントを書き残すに留めていたりするのだった。


――――――――――――――――――――――――

ものすごい細かい点ですが今回からネットの書き込みを〝〝ではなく〝〟で囲ってます

そして次回62話は予告していたとおりキリの良いところまで13000字一気に更新ですわ!

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