第13話 超希少ドロップ
「よし、やりましたわ!」
下層へいくための最大の関門を粉砕したカリンは軽くガッツポーズを作った。
中層ボス・タイタンナイトボーンが完全に倒されたことを示すように、ガコンッと下層へ続く扉が開く。
〝マジかあああああああああああああ!?〝
〝準備が必要とはいえ実質一撃で中層ボス撃破ですわああああああああ!?〝
〝うわああああああああああ!? 突破にあんだけ苦労した骸骨騎士があああああ!?〝
〝下層進出ベテラン探索者ニキ涙拭けよ……〝
〝うっそだろ……〝
〝あのこれ……もしかしてタイタンナイトボーン討伐最速記録では……?〝
〝ガチのトップ層はほぼ配信しないからあくまで暫定だけど、配信勢では間違いなく最速〝
〝パーティで挑むよりソロで挑んだほうが効率良いのはバグだろ足切り骸骨さんよぉ!〝
〝実質カリンお嬢様にしか実現不能なのでまあ……〝
〝とんでもないもの見せられましたわね……〝
〝中層ボスも楽勝だろうとは予想してたがまさかこんな……未確認の特殊行動って……〝
〝おい……これもしかして最速討伐&初の足切り骸骨形態変化観測ってことでめっちゃ価値のある資料映像なんじゃ……〝
〝形態変化で攻撃力と速度があがったほうが倒しやすいってなんなんですの!?〝
〝カリンお嬢様ヤバすぎですわ!〝
中層ボス突破に沸き立つコメント欄。
しかもどうやらタイタンナイトボーンの形態変化はほとんど知られていなかったことらしく、とんでもない量のコメントが流れていた。回線の限界なのかカクついて表示されないものも多く、カリンの動体視力をもってしても把握しきれないほどだ。
「うひぇ!? ま、まさかこんなにウケるなんて……あ、じゃあもしかして皆様これもあまりご覧になったことがないのでしょうか?」
コメントの勢いに仰け反りつつ、カリンがぱっと笑みを浮かべる。
そして早くも一部が灰になりつつあるタイタンナイトボーンの残骸から拾い上げたのは、人の頭よりも二周りは大きな鉄塊だった。
〝え、ちょっ〝
〝おいおいおいおい!〝
〝まさかそれ特殊条件下で出るレアドロップですの!?〝
〝うっそだろ!? 特殊条件ドロップまであんのかよ!〝
〝さっき両の拳に凝縮させてた鎧の欠片!?〝
〝あの骨マジでどんだけ裏情報あるんですの!?〝
「はい、皆様の予想通り、なんかこの形態で骸骨様を倒すとよくドロップする綺麗な石ですわ!」
浮遊カメラによく映るよう頭のうえに掲げつつ、カリンが元気いっぱいに鉄塊の正体を告げた。
モンスターの死体は通常、時間が経つとダンジョンに吸収されてしまう。
しかし時折こうして死体の一部が持ち帰り可能な状態で残り、武器や防具、あるいは最先端技術を支える材料になるのだ。
命がけでの採取となるモンスター素材は常に高値で取引され、探索者の主な収入源となる。ボスモンスターの素材、それも特殊条件下でしか落とさないレアドロップともなればその価値は計り知れないものがあった。
「綺麗ですわよね。というわけでしっかりカメラに映したのでポイしますわ」
ドゴンッ、ゴロゴロゴロッ。
そしてその希少ドロップアイテムを、カリンは撮影するなり無造作に投げ捨てた。
〝え、ちょっ、なにしてるんですの!?〝
〝それを持ち帰らないとか正気か!?〝
〝公式記録のない素材とかいくらになると思ってんですの!?〝
〝中層ボスのドロップとはいえ希少性とか考えたら多分7、8桁はいくぞ!?〝
〝まさかここにきてお金に頓着しないお嬢様キャラムーブですの!?〝
〝なんで捨ててるの!?〝
「え、なんでって……未成年はダンジョン産出品を持ち帰れませんもの……」
〝あ〝
〝あ〝
〝あ〝
コメントの勢いに少し気圧されたようなカリンの言葉に画面が「あ」で埋め尽くされる。
〝そ、そうでしたわ……カリンお嬢様まだゴリゴリのJKでしたの……〝
〝申し訳ありません、あまりのことに色々頭から吹っ飛んでましたわ……〝
〝まさかカリンお嬢様に常識を諭されるなんて……〝
〝一生の不覚ですの……それはそれとして申し訳ございませんでしたわ〝
〝うわぁ……もったいなさすぎる……〝
〝うわああああ! 冗談抜きでもったいないですの! お嬢様には遭遇したくないですけどあのレアドロップ拾いにいきたいですわあああ! どこのダンジョン潜ってますのおおおお!〝
〝強欲お嬢様の絶叫草〝
〝だから未成年も条件つきで素材換金解放したほうがいいんだって!〝
〝そこはしゃーない。未成年解禁したら選択肢の少ない貧困層の子とかから死んでくし〝
そう。現在日本では未成年のダンジョン産アイテム持ち帰りが禁止されており、カリンのような学生探索者はレアドロップを前にしても捨てるほかないのだ。
(まあわたくしの場合、実は捨てる以外の選択肢もあるんですけど……)
下層踏破を目指しているいまは特に関係ないので、いずれにせよ投棄一択だった。
(けどまさかこんなに骸骨様の素材を欲しがる方がいるなんて……)
驚いたカリンはなんだか少しがっかりしたようなコメント欄を温め直すように、
「まあさっきも言ったようにソロの素手で武器破壊して防御低下高速機動状態にしてから骸骨様を倒すと割と頻繁にドロップするので、欲しい方は試してみてくださいですわ! 中層突破の時間短縮にもなりますわよ!」
〝〝〝〝いやできるわけねぇですわ!?!?!??〝〝〝〝
「あ、あれ?」
謎の一体感を示し たコメント欄にカリンはまたしても困惑するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます