第13話 誰の闘いなのか

 私は「時の加護者」アカネ。

 カイト国にて自分の力をひけらかす魔人ダリとジャクだったが、そこに光鳥シドとタイサントの森の守護者ドライアドが姿を現した。伝説級の2人を前にさすがに魔人たちは弱腰になる。というか私も早くルカを探し出さなきゃ!


—カイト国—


 「私の子に何かしようというならこのドライアドが黙っていませんよ」


 そこに現れたのは南極タイサントに住むドライアドだった。


 「あなたは..光鳥ハシル!! 」


 強気だったダリも急に弱気になってしまった。


 「おや、私はあなた達のことを知らないのにこちらのことは知っているのですね。さて、王女クリスティアナ、もう一度、わかりやすく言ってやりなさい」


 ドライアドは少し意地悪そうな目つきをしながらクリスティアナへ視線を送った。


 「交渉は決裂だ」


 「というわけです。あなた達もひきあげたらどうかしら? 」


 「くっ、いい気にならないでよね! 」


 そう捨て台詞を吐くとダリは空間のドアを開け、ジャクは背中に浮く4枚の羽をまとうと空へ飛び立っていった。


 しかし気性が荒いジャクは気が収まらずに背後の2枚の羽を腕に変化させると空へ向かって印を結んだ。


 腹いせに極大魔法の準備を始めたのだ。


 空には王都の大きさの何倍もある超巨大積雷雲出来上がった。


 「貴様らなど建物ごと吹き飛んでしまえばいいわ! 」


 [ アクサタナトール・ラードン  ]


 ジャクが詠唱を唱えると天を裂く稲妻と雷鳴が鳴り響いた!


 が....それが王宮へ届くことはなかった。


 「な、なんだ? 」


 目の前の稲光はまる一枚の写真のようにそのまま動かない。

すると次の瞬間にガラスの様にひびが入ると砕け散り、灰となって消えて行った。


「く、くそ! あいつら妙な魔法も使いやがるのか! 」


流石にジャクも警戒し、腕を羽に戻すと流星のごとく東の空へ消えて行った。


 その様子を露台から見ていたクリスティアナは何が起きたのか理解できなかった。


 「ハシ、いや、ドライアド様、これはいったいどういうことですか? 」


 「ふふ.. きっと誰かが救ってくれたのでしょう。それよりクリスティアナ、あなた方はこの先、犠牲が伴う闘いに巻き込まれるかもしれません。直ぐにでもフェルナン、ギプス、そして周りの小国に呼びかけ結束をしなさい」


 ドライアドはシドへ視線を移すと言った。


 「シド、あなたはこの闘いに無暗に手を貸してはいけません。私たちの死はこの星にあまりにも大きな影響を及ぼします。いいですか? 既に動くべき者たちは動いています」


 「お母様、なぜここへいらしたのですか? 」


 「 ..母はちょうどナンパヒ・パカイ・ラヒ(儚き命の島)へ向かう途中でした。たまたまあの者たちの気配に気が着いたのです」


 「そうでしたか..  ナンパヒ・パカイ・ラヒへはどのように行くおつもりですか?なんなら私がお連れ致します」


 「ありがとう、でも大丈夫よ。そろそろクリルが来るわ」


 すると王宮の横に巨大な光鳥クリルが降り立った。ドライアドは露台まで広げた光鳥クリルの羽へ飛び移ると言った。


 「女王クリスティアナ、先ほど言ったこと、頼みましたよ。そしてできればシドのことも」


 「はい、かしこまりました」


 クリスティアナはドライアドにひざまづき敬意を示しながら答えた。


 光鳥クリルが飛び立つとその閃光の中から何百という永久蝶(とこしえちょう)が王国カイトに羽ばたいた。


 「シドよ、お母様はひとつだけ嘘を着いています。ここへはあなたを助けるために来たのですよ」


 「こら! クリル、余計なこと言わないで! 」


 王宮内にその声は響き渡った。


 母親を乗せたクリルの姿が空の彼方へ消えてもシドはしばらく大空を見つめたままでいた。

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