第9話 分断の魔界

 私は「時の加護者」アカネ。

 魔人ローキに続いて女性の魔人ダリが現れた。全身装飾されたようなダリは妖艶でつかみどころがない魔人だったがしっかりと宣戦布告をしていく。ダリが言う「あっち側」とは?ローキ、ダリ、現世にいるルカ、残るは2人の魔人だ。


—フェルナン国 運命の祠—


 「しかし5大魔人とは、よく言ったものだな」


 シャーレが意地悪な冷やかしを入れる。


 『いえ、あ奴がそう言っているだけです』


 「謙遜するな。実際、魔界ではお前たちより強いものはいないのだろう? 」



 『 ....  』


 「せめて、その5人の名前と特徴くらいは教えろ」


 『はい。では私、ローキは3つの世界を見る目を備えております。魔界はもちろん、この世界でも動けるのですが、アカネ様の現世は覗く程度しかできません』


 「ねぇ、その前に魔界ってどういうところなの? 」


 『魔界とは魔素で満たされた世界の事です。6年前、いや、消滅した時間にて「法魔の加護者」が覚醒いたしました。その時、多大な魔素を満たす世界が創られたのです。私たちはその住人であり、魔界の魔素を満たす為の存在なのです』


 「では、その魔界の住人がなぜこの世界をうろついているんだ。なぜアカネ様の世界にまで放浪している?」


 「はっはっはっは。シエラ、それはな、こいつらの世界が消滅してしまったからなんだよ。『法魔の加護者』が覚醒して魔界が出来上がったまではいいが、結月が時間を取り消してしまった。その為、魔界が一時的に消滅してしまったんだ。ルカという奴はその時、現世に投げ飛ばされてしまったのだろう? 」


 『 ..はい。まぁ、そんなところです』


 「ローキ、ルカ、ダリで3人。あと2人の名前を教えてくれない? 」


 高圧的なシエラに変わって私が質問をすることにした。


 『残りはドルヂェとジャクです。ルカは炎、ダリは猛獣使い、ジャクは天空、ドルヂェは慈愛 』


 「ジャクは空を飛べるってこと? 」


 『はい、あとは天候を操ります』


 「なるほど。じゃ、ドルヂェの慈愛ってなに? 」


 『ドルジェは誰よりも優しい者なのです。慈しみの心を持っています』


 「そんなお気持じゃなくて、能力は何なの? 」


 『すいません。わかりません。私たちは互いの全てを知っているわけではないのです』


 「じゃ、ローキあなたは?」


 『私は憤怒のローキです。私は3つの世界を覗くほかに一定時間だけ力が強くなります』


 「なるほどね。さっきの速さはそれなのね」


 『 !! あなた様は、アレが見えていたのですか? 』


 「ふふん。 当たり前だろ。僕のアカネ様は凄いんだからな」


 シエラがいつものように鼻孔を広げて自慢げな顔をする。


 「最後にひとつ質問があるけど、ダリが言っていた『あちら側』って何? 」


 『はい。私たちの存在は「法魔の加護者」の覚醒あってのものです。しかし、時間が取り消され魔界が一時的でも消えてしまった事で、私たちは自分の存在意義を考えてしまったのです。私たちの命をお預けするには今の「法魔の加護者」は脆弱すぎると.. 意見が割れてしまったのです』


 「え? じゃあ、新しい『法魔の加護者』でも作ろうっていうの?」


 私はハクアの事を思い出した。ハクアは自分よりも強力な「秩序の加護者」が現れる事を恐れ、子供たちの暗欄眼を塞ぐという非道に走った。「加護者」の存在を操作していたのだ。


 『いえ、必要とするのは「加護者」ではなく、魔界を統べる揺るがない力です』


 「それって『魔王』ってこと? 」


 『 魔王.... 確かに言い得て妙ですね。ですが確証はありません。あ奴らがどこまでの事を考えているのか.. 私は断定するには確信が欲しいのです。』


 「その存在が王国シェクタにいるということか? 確かにあそこには、このシャーレに汗をかかせるほどの気配を放つ者がいた。だがな、私たちにしてみれば、ローキ、お前があちら側に寝返らないとも言えないのだ」


 『いいえ、それはありません。私は「法魔の加護者」であるツグミ様を母と思っております。しかしダリやジャクはもう少し複雑なのです』


 「ふん、まぁ、いい。ローキ、お前は勝手にその確信とやらを見つけて来い。そして、アカネ、お前はこのまま現世へ帰るんだ。今はお前の世界の混乱の方が大きい。お前が現世に帰ったらすぐにシエラを送り込む」


 「シャーレ、大丈夫?」


 「ああ、心配するな。今回はアコウやロウゼの力も借りようと思っているよ。私は、取り敢えず『秩序の加護者』を探しだそうと思っている。だいたい見当もついているからな」


 「無理しないでね、シャーレ」


 「ああ、お前は一刻も早くルカを見つけて連れて来るんだ」


 「うん、わかった」


 私は早速「時の狭間」を開くと現世へ戻った。

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