第133話 憎しみが生むもの⑪
「なるほど、だとするのなら本命を別に用意しているのか?」
「はい。代々木方面と中央西改札から侵入する部隊には陽動の動きもしてもらう予定です。南改札に展開する部隊には敵が混乱した隙に突入してもらいます」
「それに南改札なら周辺に展開している部隊を片付けたSATや自衛隊の戦力を随時投入することも可能になるということか」
「えぇ、新宿駅構内にどれだけの敵が展開しているかはわかりませんが、戦力はどれだけあっても困りませんから」
「わかった。それならすぐにでも作戦の準備を始めるぞ」
自衛隊の隊長の号令に合わせて各自が動き始める。今回の作戦では準備の段階でもそこそこの時間がかかる。まずはそれぞれが配置につかないことには始まらない。
それに今回一緒に行動するのは自衛隊のメンバーになる。もちろん初対面なので全員と軽く話しておいたほうが良いのは間違いない。
「君が南改札の隊長かな?」
「えぇ、そうです」
そうやって話しかけてきたのは先ほどの隊長と比べてずいぶんと若く見える男性の自衛官だ。
「自分は高宮2等陸曹だ。よろしく頼む」
「剣持です。よろしくお願いします」
「それで君は今回の作戦についてどう考えているのかな?」
「今回の作戦についてですか?」
「あぁ、自分としてはやはり子供が立案した作戦にのっとって行動するっていうのは不安が残るからね。ふだんから彼と行動しているであろう君に聞きたいのさ」
「なるほど…その気持ちはよくわかりますよ。ただ、隊長の作戦はあまり問題はないと思いますよ。いつもあまり具体的な作戦を出すことはありませんけど流れさえわかればどうにかなりますから」
「なるほどね。確かに作戦は現場の判断によって柔軟に変えていったほうがいいことも多くある。ただそれだと部隊間で認識の齟齬が発生しないのかい?」
「それは部隊間同士で連絡を取り合いますから大丈夫ですよ」
「そういうことなのか。
「自分はほかの部隊にいたことがないのでわかりませんが部隊間でそれぞれ考えて動くっていうのは特色かもしれませんね」
自分たちで考えて行動するというと当然のことのように思われるかもしれないが、自分たちで行動するということは責任も自分が背負うということだ。もちろん全責任が自分たちに降りかかるというわけでもないがそれでも覚悟は必要になる。
だからこそそれぞれに自信とそれに見合った実力がないとできないことなのだ。
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