第132話 憎しみが生むもの⑩

そうやって任務の確認をしている間にも車は新宿駅の近くにつく。これから俺たちはまずいったん自衛隊の隊員と司令部で合流して作戦を確認しあってから各地に展開することになる。時間がないのは間違いないがそれを考えすぎて脳死で突撃するのは本末転倒だ。事件の早期解決のために必要な先行投資だと考えるのが一番いいだろう。


車から各自が使う荷物を取り出すと近くにある司令部まで歩いていく。司令部に入るとすでにそこでは自衛隊の隊服を着ている人物や警官などがあわただしく動いていた。


治安部隊パブリックオーダーの方々ですか?」


「そうだよ」


「こちらに来てください」


俺たちは自衛隊の隊服を着た人物に司令部の中心であるホワイトボードが置いてあるところに案内される。そこには俺たちと共同で作戦を展開するであろう部隊の隊員たちが集まっていた。


治安部隊パブリックオーダーか」


「ええ、そうです」


「今回はよろしく頼むぞ」


筋骨隆々な自衛隊の隊長らしき人物は隊長と握手を交わす。


「それでは現在の状況の確認をします」


ホワイトボードの前に立った警官が現在の状況を説明し始める。


「現在新宿駅内はテロリスト、全解放戦線とみられる集団に占拠されており駅周辺でも戦闘が起きています。現在のところ新宿駅構内の様子なんかは全く分かっておらず爆発による損傷もどの程度なのかわかっておりません」


「どれぐらいの数の戦闘員が駅の外に出ているんだ?」


「詳しい数はわかりませんが50人規模の部隊が複数確認されています。現在は周辺の署から集めた警官隊がギリギリのところで耐えてはいますが包囲網の突破の危険性もあります」


「わかった。駅周辺の敵部隊制圧にも自衛隊員を参加させよう。さらに追加の増援も練馬駐屯地に要請しておく」


「ありがとうございます。それで今回の作戦なのですが…」


「それはこっちから説明するよ。今回の作戦では3か所から同時に攻め込もうと思っています」


「3か所から同時にか。場所は?」


「まずは代々木方面から線路をたどって攻め込む部隊がひとつ。そして南改札から攻め込む部隊がひとつ。さらに中央西改札から攻め込む部隊がひとつです」


「なるほど。それぞれの部隊の規模はどのくらいだ?」


「それぞれ15人ぐらいを想定しています」


「確かに現状その程度の人数しか出せないが、その人数で本当に敵を突破できるのか?聞くところによると敵の装備は潤沢で軍隊と比較してもそん色ないらしいが」


「はい。逆に1か所で集中して攻撃したところで戦力を集中されたら突破できないと思います。だからこそ分散して敵が混乱した隙を狙う作戦です」



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