第127話 憎しみが生むもの⑤

俺が隠れた遮蔽物は6階の一番端に当たるところ、ちょうど対角線に例のスナイパーがいる。これだと少しでも体を出すと、一撃で体が砕け散ることになるので慎重に行動しなきゃならない。


すでにスナイパーの正面に展開している弓削さん所や、蒼葉君のところは前進していっていて俺たちのところだけ遅れている。


ただだからといって焦って遮蔽物から体を出して砕け散ったら意味がない。とりあえず、スナイパーの射線に重ならないような場所を通って前進していく。時々、敵構成員が出てくるが集中砲火を食らわせることで敵が行動をおこす前に殺す。


そうやって進んでいくと、だんだんとスナイパーが近づいてくる。ここから体を一瞬だけ出して撃ち殺すことだって容易にできるような距離だ。


それだからか俺の隣にいた一人のSATの隊員が体を出してスナイパーを撃とうとしてしまう。その瞬間、そいつの頭は爆散し、脳の破片があたりに飛び散る。


隣にいた俺は頭からそれをかぶってしまう。今頃、人の死でうろたえることはないが、さすがにこれはこたえるところがある。


だが、戦場で大切なのは冷静さだ。こんな時こそ周りを冷静に見なければならない。


とにかく、スナイパーがこっちを見ている間は俺たちがあいつを殺すことはできない。リロードしている間か、俺たち以外を狙っている時かの2択だ。ここは天井があまり高くないので隠れたままグレネードを投げることもできない。


とりあえず、まだ近くにいる敵構成員を片付けるためにスナイパーを仕留めることはいったん忘れる。


俺たちの正面に展開していた敵構成員がこっちを撃とうと体を乗り出した瞬間に、アーマーのつなぎ目に弾を打ち込んで、射殺する。


こうすれば、高性能なアーマーを着ていようと意味がない。まぁ、俺ではまだ百発百中でそこに撃ち込めるわけではないので少しの運要素も絡んでくる。


そうやって俺たちが敵構成員を片付けている間にも弓削さんのところではスナイパー以外の敵構成員を片付け切ったようだ。すぐにSATの隊員がスナイパーに銃撃をしようと体を乗り出しているのが見える。


…まぁ、当然のようにそいつは頭を砕かれる。


しかし、これが俺の待っていたタイミングだ。スナイパーがこっちを見ていないその瞬間、俺はスナイパーの頭に向かって数発の銃弾を撃ち込む。


俺の撃った銃弾はいくつか、ヘルメットにはじかれて有効打にはつながらなかったが最後に撃った銃弾が逆に敵のヘルメットを弾き飛ばした。


そのすきを蒼葉君は逃さない。素早い動きでスナイパーの頭に標準を合わせると引き金を引いた。

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