第119話 不穏の足音㉚
その日、結局弓削さんが戻ってくることもなく定時となり、俺はいったん家に帰ってからまた次の日の朝拠点に向かう。
最近、ここでの任務が忙しいってわけじゃないが家にいる時間がとても短くなってきている。まぁ、そもそも俺は無趣味なので家にいてもやることはないし別に全く困らないので別にいいが、毎日が充実しているかと言われたらそうではない。毎日拠点にいってはいるがそこで何か仕事をしているかと言われると別にそういうわけでもない。筋トレなんかは備え付けられてある備品でできるのでそういうことをしているときもあるが、それは仕事とは言わないだろう。銃を使った訓練は本部に行かないとさすがにできないので銃に触るのも事件が起きるか、稀に射撃訓練場に行くときだけだ。
新しい趣味でも見つけようかなと思いながら部屋に入るとそこではいつも通り、瀬霜さんが机の下で寝ており、九条兄弟は仕事をしていた。いつもと違うのは弓削さんがまだ来ていないというところだけだ。
「おはようございます」
「おはよう」
「弓削さんはまだ来ていないんですか?」
「どうやら、今日も独自に動くらしいよ。ただもしかしたら午後にはここに帰ってくるかもしれないって言ってた」
「なるほど、」
俺は自分の席に荷物を置いてパソコンを起動する。やることが特にあるわけでもないので昨日と同じように過去の事件のデータベースを開いて気になるものがないか探す。
こんなのでいいのか考えることも多々あるができることがないので仕方がない。
1時間ほどデータベースをいじって情報を収集したところで気分転換に筋トレ室に行く。この拠点は喫茶店の地下に作られているので本部みたいに広いわけじゃないが、いつも仕事をしているワークスペースに筋トレをするためのトレーニングルーム、そして実験だったり、ちょっとした研究ができるラボの3つがある。現在は研究をできるような人がここには所属していないのでラボが使われることはあまりないが、トレーニングルームは俺とか弓削さんが使っているのできれいに整備されている。
俺は体全体をまんべんなく鍛えるためにちょくちょく使う器具を変えながら筋トレを行う。筋トレというとボディービルディングのように魅せる筋肉というのを育てるためのものを想像するかもしれないが、俺とか弓削さんがやるのは実用的な筋肉を鍛えることだ。だからありえないぐらい重いものを持ち上げるのではなく少し鍛えている人なら頑張って持ち上げられるぐらいの重さを使う。
筋肉はあればあるほどいいというわけではなく何事にも限度があるのだ。
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