第72話 襲撃㉓

「…となるとここで救援を待つということですか?」


「まぁ、それが一番確実な方法ではあるんだよね。ただあと何時間すればここに救援が来るのかとかそもそも管制が敵方に落ちているのなら俺たちのことを発見したとしても敵に俺たちの情報を流されるかもしれないとか不確定要素が多いこともあるんだよね」


「…正直俺たちが今回持ってきた装備で後1日耐えきることは不可能です。持ってもあと12時間。それに非戦闘員たちは心身ともに疲弊しているはずです。そんな長時間精神的にも肉体的にも耐えられるのかという問題もあります」


「…全員が生き残ることを前提とするのならやっぱり相当厳しいことになるよね」


「…というと?」


「ここにいる全員が助かることを目標としないのならこのまま強行したっていいんだよ。でもそれだと本当に少数しか生き残ることができない」


「それはあそこに残って戦っている警官たちに申し訳ない。さすがに隊長の命令だろうとそれはできません」


「わかってるよ。ただ、そうなるともう僕たちにできることはここでひたすら耐えることだけなんだよ」


「…瀬霜今の武装はどれぐらいだ?」


「…今は対物ライフルに拳銃だけだよ」


「無理だ。耐えられない。もし機関銃が残っていたらどうにかできたかもしれないがそれだけだとどうしようもできない。敵が何人残っているのかもわからない状態で博打すぎる」


「まだ妨害電波は出ているんですか?」


「うん。ここからあと3キロは進まないと妨害電波の外には出られないみたい」


「それなら3キロだけ先に進んで救援だけを呼んで帰ってくるのではだめなんですか?」


「…それならぎりぎり行けるかもしれない。その間敵が大規模な攻勢をかけてこなければだけど」


「できるだけ早く帰ってこなくちゃならない。もしその作戦をやるのなら危険ではあるが一人でやらなくちゃならない」


「それなら俺が行こう」


そうやって手を挙げたのは瀬霜さん。確かに今、弓削さんはさっきの爆発でダメージを追っているからあんまり無理はできない。それに蒼葉君は肉体的に瀬霜さんには劣る。それに俺はまだ山の中での行軍に慣れていない。


「さっきはああいったが本当に一人で大丈夫か?もし複数人の敵集団と出会ったら厳しいぞ」


「大丈夫だよ。それに弓削君があんなに体を張って俺たちを助けてくれたんだ。最年長の僕が何にもしないなんてことは示しがつかない」


「…もし危なくなったらすぐに撤退しろ。ここでお前に死なれたら一緒に酒を飲みに行けなくなる」


「そんな特大イベント僕が逃すと思うかい?それじゃ行ってくるよ」


瀬霜さんはそういうと振り返りもせずに走っていった。

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