第70話 襲撃㉑
「…そのミサイルは弓削さんに当たったんですか?」
「わからない。ただ…弓削いる方向に飛んで行ったのは間違いない」
1回目の爆発音はやはりミサイルが着弾した音だったのか。だとしてもなんで瀬霜さんは一発目の銃弾を外したんだ?彼の腕前は確かなのに…
「…間に合わなかったんですか?」
「間に合わなかったわけじゃないんだ。俺が1発目の銃弾をローターにあてられなかったんだ…俺のミスだ」
「…とにかく弓削さんのところに急ぎましょう」
蒼葉君には無線で作戦が完了したが弓削さんの生死が不明だというのを伝えておいた。蒼葉君なら俺たちが部隊から離れたとしてもうまくやってくれるだろう。とにかく今は弓削さんの生死を確認するのが先だ。もしかしたらミサイルは外れていたかもしれないんだ。そう悲観することはない。
瀬霜さんと合流したところから少し歩いたところにミサイルが着弾した後であろう大きなクレーターが確認できた。そしてその近くには黒焦げたブローニングが落ちている。
「弓削、、、嘘だろう、、、そんな」
瀬霜さんは黒焦げたブローニングを確認するとその場で泣き崩れた。俺もその情報を正しく処理できない。黒焦げたブローニングを呆然とした気持ちで見つめていると頬を涙が伝っていった。あぁ、弓削さんは、俺たちのために死んだんだ、、、そう思うと涙が止まらない。俺も瀬霜さんの隣で膝をつく。その時、
「人のことを勝手に殺すな」
近くにある茂みのほうから人の声が聞こえてくる。俺が振り返るとそこには黒く焦げた制服を着て、咳き込んでいる弓削さんが立っていた。
「…弓削さん、、」
「俺は死んでない」
俺はそういう弓削さんに抱き着く。弓削さんは少しうっとうしそうにしながらも俺のことをそのままにしておく。
「おい瀬霜、もう一度いうが勝手に殺すな」
「、、、え?」
瀬霜さんが驚いた様子で弓削さんのほうを見る。弓削さんが無事なことを確認すると瀬霜さんは安堵した表情を浮かべて涙を手で拭う。
「こんなことで死なないと信じていたよ」
「さっきまで俺が死んだと勘違いしてただろうが」
「…無事に帰ってきてくれてうれしいよ」
「あぁ、これが終わったら約束通り飲みに行こう」
2人はそういうとがっしりとお互いの手を握って互いの健闘を称えあった。
「それで剣持、いつまでくっついているつもりだ」
「すっ、、すいません」
俺は手で涙をぬぐってから急いで弓削さんから離れる。
「とにかく蒼葉君のところに戻るぞ。まだこの地獄から脱出したわけじゃないからな」
弓削さんはそういうと蒼葉君たちがいるであろうところに向かって歩き始める。俺と瀬霜さんもそれに続くようにして歩き始める。
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