第42話 凶報⑭

「…潜入任務なのになんでそんなバカでかい銃でここにきてるんだ?」


「この38式歩兵銃の良さがわからない?見た目だって最高だし、性能も使えないことはないよ」


彼がいう38式歩兵銃というのは明治38年に製造が始まったボルトアクション式の歩兵銃のことだ。満州事変だったり日中戦争なんかで主力として扱われていた銃で評価も高い。ただその銃の生産が終わってから100年以上もたっているんだ。現存している者のほとんどは博物館行きになっているだろう


「そうじゃなくて、なんで室内戦なのにそんなの使ってるんだよ?」


「確かに14年式拳銃のほうが良かったかもしれないけど、まぁ自分はこれが好きだから」


「…そうか」


まぁ、ここから脱出することに協力してくれるっていうのならだれでも構わない。ただ人数が1人増えたごときでどうにかなる問題じゃないような気もする。そもそもこの船をこの人数で制圧することは無理だろうしそうなると隠れるしかなくなる。


「この状況でどうするんだって顔してるね。まぁここは僕に任せてよ」


少年はそういうとその部屋から出ていく。少年についていくか迷うが心配なのでついていく。


少年は敵を警戒することもなく船内を進んでいく。


「この先は敵がいるから気を付けてね」


少年はそういうと俺がさっき中に入ったたくさんのモニターがある部屋に入っていく。中にはさっきそこにいた2人のほかにも数人の海上保安庁の隊員がいた。


少年は部屋に入るとまず近くにいた武装をしている隊員の頭に6.5mm弾を頭に撃ちこむ。そして慣れた手つきでボルトを引いて空薬きょうを出してから次弾を装填する。


あまりにも手慣れた手つきだったので見ていることしかできなかったが俺としても見ているだけではいられない。持っていた拳銃を使ってもう一人の武装した隊員を撃ち抜く。


中にいた海保の隊員は俺たちが2人を殺してから俺たちが侵入していたことに気づいたようで腰につけている拳銃を抜こうとする。


だがそうしようとした隊員から少年と俺が撃ち抜いていく。結果中には一番初めに見た2人しか残らなかった。ただその2人も何かを言おうとしたとたんに少年に撃ち抜かれてしまう。


「最後の2人は殺さなくてもよかったんじゃないか?」


「甘いよ。こっちはまだ人数不利があるんだから殺せる敵は殺しておかないと」


「…一理あるな」


「どうする?胸についている階級章だけでも取っておく?」


「…いや、どうせ今回の件に関与している職員は判明するはずだ。そこまでしなくてもいい」


「わかったよ。それじゃ、次に行こうか」


少年はそういうとその部屋から出ていく。


少年についていきながらもさっきの銃さばきについて考える。すごい技術だった。あんなハイスピードでボルトをいじりながら正確に当てるなんて見たことがない。しかもまだ彼は少年と呼べる年齢だろう。人を殺しても何も感じないというのもだいぶヤバいけど、人を殺すための技術が高いというのも十分恐ろしい。


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