第41話 凶報⑬

司令部が国交省と防衛省に連絡を取っていたころ俺は近くにあった使われていないだろう部屋の中に隠れていた。その部屋には壊れた備品がたくさん置いてあった。


本当はここみたいに閉鎖されているところに隠れるのは万が一の時に逃げ切ることが難しいから良くないけどしょうがない。そもそも船の中で見つかったらどこにいたってゲームオーバーになることに間違いはないから正直どこもあんまり変わらない。ということでこの部屋に敵が入ってきたとしても見つからないように壊れたベッドの下に隠れる。


俺が隠れてからすぐに外から怒号が聞こえてくる。どうやら俺が殺した船員が見つかったみたいだ。ここからが本番。ただ俺にはもうどうすることもできないのでここからは神に祈るしかない。


怒号が聞こえてからすぐに船内にサイレンが響く。この船に侵入者がいることがばれたようだ。ただこの船は見た感じだとだいぶ広いわりに船員が少ないように感じる。可能性はあるだろう。


20分ぐらいたっただろうか。八潮から木更津に行くまでにかかる時間はおそらく30分から40分ほど。少なくとも折り返し時点にまで来たのだろう。


その時この部屋に近づいてくるような足音が聞こえてくる。だんだんと死が近づいている実感がして息が詰まるような感覚に陥る。訓練されていると言えど所詮は人間。死への恐怖には勝てない。


そしてその足音はこの部屋の前で止まる。


少し時間がたってから部屋の扉が開けられて部屋の中が明るくなる。


俺は完全に姿を隠しているため相手の姿は見えないが足音がこっちに近づいてくるのはわかる。


「隠れているんだよね。出てきてよ」


その相手は隠れていて見えないはずの俺に話しかけてくる。しかも声は高くまだ声変りをしていない少年のようなものだ。


相手はすでにこちらのことがわかっている。ここはおとなしく投降するべきだ。


俺がベッドの下から外に出るとそこには大戦時に使われていたような木のフレームが使われている狙撃中のようなものを肩にかけている少年がいた。


「もしかして君が噂の新人くんかな?安心していいよ。僕は治安部隊パブリックオーダーの人間だから」


「…なぜ俺が治安部隊パブリックオーダーだということが分かった?」


「だって君白い制服着ているじゃん。海上保安庁のものとも少し違うとなればここいいるのは治安部隊パブリックオーダーぐらいでしょ?」


どうやらこの子が治安部隊パブリックオーダーの関係者というのは本当のようだ。そもそも治安部隊パブリックオーダーの制服なんて関係者しか知っているはずがない。それにこんな小さな子供が所属しているような組織なんて治安部隊パブリックオーダーしかないだろう。


「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。僕だってここには潜入任務できているからね」


「潜入任務だと?それならその銃はどうしたっていうんだ?」


「あぁ、これはさっき組み立てたんだよ。部品は荷物の中に忍ばせておいたからそれをね」

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