第38話 凶報⑩
先ほどの放送を聞いている限り今ここにいる海上保安官はほとんど作戦室にいると考えることができる。となると今はチャンスだ。ここでとりあえずさっきあの2人がいた部屋の中を確認してみよう。そこそこ階級の高い二人がいた部屋ということは何か重要な情報があるのかもしれない。
おそるおそる部屋の扉を開けると中には大量のモニターとコンピューターがおかれている。そしてそのモニターにはどうやらこれからの航路?のようなものが映っている。
そしてそれによるとこの船の名前は石見。旧国名の名前が使われているところから見るにPLHと呼ばれるような型なんだろう。PLHというのはヘリコプターを搭載している巡視船のことだ。そしてそのモニターの点線が向かう先として示されているのは木更津海上保安署。この船の所属がどこなのかはわからないがもしかしたら木更津で組織の幹部をかくまうつもりなのかもしれない。とりあえずどこに向かっているのかということがわかったのは大きな収穫だ。あと獲得しておきたい情報は指揮官が誰なのかということ。
ただ現在司令官がいると思われる作戦室には多くの海上保安官がいると思われる。今見に行くのはだいぶ危険だ。だがこのままここに長くいるのも危険だ。できることなら早く帰還したい。ここでとりあえず本部に情報を伝えればいいじゃないかと思うかもしれないが船の中だからか無線がつながりにくい状況になっている。つまり情報を届けるためにはもう一度あそこに戻らないといけないということだ。とにかく今できるのは司令官の顔を見ておくこと。
その時俺の目の前には少し蓋が緩んでいるように見える排気管が見えた。手をかけてみると実際にすぐに外れてしまう。これはもはやここを使ってくれと言っているようにしか思えない。とりあえずこの管でそこに行けるのかはわからないがとりあえずチャレンジはしてみよう。
俺が入った排気管はだいぶ狭いが匍匐前進を使って進んでいこうと思えばできなくもないといった感じ。ただもしここにいることがばれたとしたら何もできずに死んでいくに違いない。なるべく早くここから出たいものだ。
そのまま複雑に絡み合っている管を進んでいくと少しづつ光が見えてくる。近づいていくと話し声まで聞こえる。おそらくこの部屋が例の作戦室というやつなのだろう。思ったよりも早く来れてよかった。とにかくささっと確認をして帰ろう。
幸い俺は視力がいいので司令官と思われる人物の胸についている階級章もみることができる。見てみるとそこにあったのは縦に線が2本入っている階級章。一瞬1等海上保安監かと思ったがそれならもう少し真ん中のスペースが詰まっているはずだ。となると考えられるのは海上保安監か?
…ありえない。なんでそんな高階級の人間がここにいるんだ?海上保安監といったら海上保安庁採用のだったら実質的な最高位のような立ち位置にある。…まぁ、それを考えるのは俺の役目じゃない。とりあえず俺の任務は達成された。帰還しよう。
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