第37話 凶報⑨
なんでここに海保の帽章があるんだ。状況的に考えるにこの船はあの組織に関係しているもののはずだ。となると海保があの組織に通じているということになる。そんな馬鹿なことがあるはずない。
ということはこの帽章が偽造の可能性が高いということになる。というかそれしかありえない。もし本物だったら大変なことだ。
『こちら剣持、例の通路をずっと進むと部屋のようなものを発見しました。中には海保の帽章が見られます』
『こちら本部、海保の帽章…了解しました。剣持さんは引き続き調査をしてください』
本部へ報告を済ませてからその部屋の奥にある扉を開いてそこを進んでいく。
扉の先に見えたのはまるで船内のように狭い通路。これはもしかしなくても本当に船内なのかもしれない。そして先ほどの部屋から通路を少し歩いたところにある部屋から光が漏れているのが確認できる。
近づいてみると何かを話しているようだ。
「船内に異常は見当たりません」
「わかった。これからも引き続き確認してくれ。もしかしたら警察のやつらが入ってくるかもしれん」
「了解です。それとなぜあの男を回収したんですか?」
「あぁ、それはな…」
その時通路全体にアナウンスが流れる。
『総員作戦室に集合。繰り返す総員作戦室に集合』
クソ、いいところだったのにちょうどアナウンスが入った。俺は慌てて近くにあった物陰に隠れる。
アナウンスから少しするとその部屋から2人の男が出てくる。2人は他愛もない会話をしながら上にあると思われる作戦室というところに向かっていく。
物陰に隠れてやり過ごしたが今のは危なかった。ここはだいぶ狭いのでタイミングが悪いと隠れるようなところがない状態で接敵するかもしれない。それに今の2人の制服だったりしぐさを見て確信したがここは本当に海上保安庁が管理しているらしい。となるとさっきの帽章も本物ということになる。これは厄介なことになりそうだ。
それにさっきの制服につけてある階級章からすれば1人は2等海上保安監でもう一人は1等海上保安正だ。警察なら警視相当の階級に属するものがここに集まっているなんてどう考えてもおかしい。それにあの2人がトップというわけではないのならさらに上の階級である1等海上保安監がいたとしてもおかしくない。
ただ俺の仕事はここでの情報を持ち帰ることだろう。もちろん専門は突入して敵を制圧することなので専門ではないがスパイのようなものの訓練も受けているのでできないこともない。
今の情報ではまだ足りない。トップの名前となぜこんなことをしているのかということを調べたいところだ。この2つが入手できるだけでもだいぶ変わるだろう。とりあえず俺の潜入のミッションはまだやることがある。
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ちなみに警視というと警察全体の3パーセント弱しかいないといわれるエリートたちのことです。
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