第33話 凶報⑤

すでに突入する俺たちの装備とかの準備はできているけれど瀬霜さんとか司令部が機材の準備をしたり移動したりといろいろとすることがあるのですぐには作戦が開始されることはない。


「これは初めての実戦だろう?」


「そうですね。世田谷のやつは傍観者だったので」


「なら一つアドバイスをしておく。さっきも言ったが交戦規定に縛られすぎるな。撃つときはためらうな。迷う前に撃て」


「迷う前に撃て…」


「あぁ、そうだ。その判断の遅れが生死を分けることになる。特に今回は相手のほうが俺たちよりも装備がいいかもしれない。絶対にためらうな」


「わかりました」


俺たちの会話が終わった時九条君から準備が完了したという連絡が来た。


「それじゃ、行くぞ」


「了解」


『こちら弓削、これより工場への侵入を開始する』


『こちら本部、了解した』


一番初めの扉は俺がドアを開いてから弓削さんが初めに入っていく。そして2人で背中をかばいあうように中に侵入する。がそこには気味が悪いほど静かな空間が広がっていた。


「少し暗いな。銃のライトをつけておけ」


「了解」


室内は薄暗いくなっているが銃のライトをつければ十分に見通せる。ただ陰になっているようなところで黒い服装の人物がじっと息をひそめていた時に見つけられるかというと怪しい。


物陰をすべて慎重に確認していくが、結局何も起きずに1階のクリアリングが達成される。この工場は3階建てなのでまだあと2階分クリアリングしていないことになるがまるで人が居るような気がしない。というかそもそも人が居るのならなんで撃ち下ろせるような絶好の機会を見逃すのかがわからない。


とはいえ確実にクリアリングをしないといけないため階段を上がっていく。すると弓削さんが手でストップのサインを出す。俺はあたりを見渡すがどこにあるのかわからない。足元が薄暗いこともあるがそれを考慮しても怪しいところすら見つけられない。


「トラップだ」


「どこですか?」


「ここに手りゅう弾を使ったトラップがおかれている。ここを見てみろ。糸が張ってあるだろう」


「…本当にブービートラップなんて仕掛けられることあるんですね」


このブービートラップは手りゅう弾の安全ピンに糸が張ってありそれに引っかかったりして糸が引っ張られると安全ピンが抜けて手りゅう弾が爆発するという典型的なものだ。しかしこの糸が細くて見えにくい。全く気付かないうちに爆発してることだって全然あり得る。


「あぁ、組織の本拠地に侵入するときなんかにたまに仕掛けられているのを見る。だがここに貼っているというのはどういうことなんだ?」


「…確かにそうですね。俺たちが来てから張ったようには見えないですし」


「あぁ、それに日常的に使うところに普段からトラップを仕掛けているわけもない。となるとどういうことだ?もしかして情報が間違っているというのか?」


ここにトラップが張ってあるということは本来ありえないこと。通常なら普段から使うような場所にトラップを仕掛けたまま放置するなんてこともない。普通に危なすぎる。だけど俺たちが来てからこれを設置したなんてこともありえない。できるだけ気づかれないようにしていたしそもそももし誰かが脱走しているのなら本部から連絡があるはず。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る