第31話 凶報③
弓削さんが一人で捜査を始めてから1週間がたった。調査を始めてからというもの弓削さんは一度もここに出勤していない。何か不慮の事故で死んでしまったんじゃないかと不安になるけどどうやら九条君とは連絡を取り合っているみたいで時々捜査の状況を教えてくれる。
そしてどうやら今日にも捜査は終わるらしい。たぶんだけど一回こっちに帰ってきて上の許可を取ってから例の事件の犯人を捕まえるっていう流れだと思う。
そしてその時九条君の電話が鳴った音が聞こえた。
そして短く会話をして電話切る。
「仕事だよ。場所は品川区八潮、そこまでは車で行くから瀬霜さん、運転よろしくね」
「了解」
「それじゃ、行こうか」
九条君の合図で俺たち3人は一気に荷物をまとめて出発する準備を整える。こういう時は普段だらしない2人もちゃんとやる。普段の2人が嘘のようだ。
というか弓削さんがいない状況で事件とか対応できるのかな。普通に人数不足だと思うんだけど。
とにかく荷物をまとめると特型警備車に乗り込む。この特型警備車というのは日本の警察が使っている装甲車のようなもの。装備としては放水砲と銃座といった感じ。まさに特殊部隊が乗るといった感じの車だ。
運転席には瀬霜さんが座り後方に俺たち3人が座る。そして全員がちゃんと座ったことを確認すると瀬霜さんが運転を始める。
特型警備車はぐんぐんとスピードを出していく。…というかこれ出しすぎじゃない?周りの車をどんどん追い抜いていくしどう考えても法定速度を守っていない。それで運転がうまいのならまだいいんだけど何回かカーブを曲がり切れてないような挙動をしている。とんでもなく揺れているしめちゃくちゃ荒い運転だ。
「こんなにスピード出して大丈夫なんですか?」
「うーーん、良くわかんないけど大丈夫だと思うよ。いつも瀬霜さんはこんな感じのスピードをパトカーとか使っているときでも出してたしいつも通りって感じかな」
「いや、こんな車どおりが多いところでこのスピードはまずいですって」
「大丈夫だよ。緊急車両っていうのもあってみんな道を開けてくれるし案外事故を起こしたことはないからね」
たぶんだけど道を譲ってくれるのは緊急車両だからっていうわけじゃなくて単純にスピード出すぎてて怖いからだと思う。こんなのと接触なんてしたら一発で廃車になること確定するし死ねる。しかもこのスピードを装甲車で出しているっていうのがたちが悪い。どういう改造をしたらこういうスピードが出るようになるわけ?
「でも交通機動隊には毎回毎回めちゃくちゃ怒られているみたいだけどね」
「そりゃそうでしょう」
「まぁ、クラウンとかレガシィとかじゃ、このスピードで走ってる装甲車止められないから多分大丈夫だよ」
それは大丈夫じゃないのでは?
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