15.ガイド近江八幡城 入り江に聳える二つの天守?
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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私達は安土城から、船で旅立った。
船は昔ながらの安土の城下町の掘割を抜け、琵琶湖へ。
船内アナウンスの音楽がちょっと歪んでスピーカーから流れる。この古っぽさ、好きだなあ。
「琵琶湖周回の歌だねえ」「ですねえ」
「皆様~本日は琵琶湖お城巡り遊覧船にご乗車頂き~誠に~有難う~ごさいます~」
「旅情だねえ」「ですねえ」
やべ、あたしも何かババ臭ェ。オッサンのジジ臭さが移ったー。
でも石垣と白壁ののんびり落ち着いた景色の中、掘割を進んでいく船旅は、やっぱいいわ~。
やっぱババ臭ぇ?
「大層落ち着いた眺めです。全ての事は遥か昔」
と、何か切なげにお延さんがお次さんの肩に手を置きながら話した。
「そうね。時の裏の裏に、みんな消えてしまった。嫌な事は全部」
ん?お次さんの言ってる事がわからん。過去に過ぎ去った、じゃなくって「裏」ってどういう意味?
安土もそうだけど、近江八幡の町も碁盤目状に整備された綺麗な城下町だ。
その間を縫う様に船が市内に入っていく。
運河を囲む立派な石垣と、その上に連なる白い蔵が、商人の街の息遣いを今に伝える。
…って感じでガイドすればいいのかな?
そして船着き場は大手門のちょっと手前で、すこし進むと巨大な大手門。その先は、安土城同様、山麓の上段にある御殿まで真直ぐ続いている…その先は山道だー。
「今日は先も長いから、ロープウェイで行こか?」ナイスだぜオッサン!
「そうだ、司さん。
そろそろ検定の面接試験に向けて実習やってみようか?」
「へ?」
そうだった。完全にただの観光客になってたよ私。
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「琵琶湖の入江を挟んで安土城と向き合う近江八幡城は、織田家の後に日本の政治を引きついた豊臣秀吉の甥、豊臣秀頼が築いた城です。
天正震災で大破した安土城に替わり、また拡大した安土の町を震災復興を分担する形で受け取った、兄弟の様な城です。
その後近江八幡の城下町は日本の近代化と共に商業都市として栄えて行きます。
城の中央には安土城と同じ規模の五層の天守が築かれています」
「御立派ですね」
「いやいや、まだ照れがある」
「つかさー!歌ってー!」
「イスパーキャ、ポルファボー!」
「もしも~私が~って、グラ玉無茶言うなー!」
「何でこんな近くに二つお城が聳えてるんだい?」
「ふっふっふ、FAQですね?
それは!17世紀に『一国一本城令』が発令されたからです!
江戸幕府は『島原の乱』でスペインポルトガルと結託した反乱軍を、有馬藩は廃城前だった原城と日野江城で撃退し、キリシタン艦隊と称したスペイン・ポルトガル艦隊と合流する前に撃退する快挙を成し遂げましたー!
これを評価した徳川幕府は、幕府と諸藩の城代と合同で日本各地の支城を縮小し監視所として維持し、反乱を未然に阻止する監視所にしたのデース!」
いかん、最後グラちゃん移った!
「うん、内容はOK。でも観光客はスペインやポルトガル、古い貴族家の関係者もいるから少しボカした言い方がいいかもね」
「ぬううん!ガイドの道は奥が深い!」
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山麓の広大な御殿をグルっと見て、その脇にあるロープウェイで…
「きゃ~高いよ~」お玉ちゃんがお延ちゃんにひっついてる。可愛い。
「キャ~高いデ~ス!」グラシアちゃんが年下のお次さんにひっついてる。
何かヘン。てか途中から楽しんでるでしょうこの二人!
「キャー!」「イェーイ!」遊園地のジェットコースターかよ!
でもカワイイ。
山上の平面構成も、あの豪華な行幸御殿が無い以外は安土城に似ている。
ただ、聳える天守は金の軒瓦や金具に飾られているけど、あの八角堂の朱塗りの柱や最上階の金ぴかに比べると、やや普通な感じがする。
やっぱ安土城ってスペシャルだわ。
天守から見下ろす街並は綺麗だわ~。
「関白が若い頃作った街。結構いい感じ?」
何故か、お次さんが自慢げだ。
「豊臣秀次ってどんな人かな?」
後世の評価では、秀吉の兄で傑出した調停者秀長には及ばない物の、豊臣家と徳川家の間を繋いだ凡庸にして堅実な官僚、って評価かな?
「関白は…まあ良いオッサンだった。スケベオヤジだったけど」
そう言うお次さんの目は、京の方を見ていた。
何故だろう、一瞬凄く悲しそうな、でもとても嬉しそうに答えてくれた。
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※「大坂の陣」ではなく「大坂の『乱』」になっている理由、それに関ケ原の合戦で処刑された石田三成がかかわっている理由は追々。
※近江八幡城の天守は一説では三層だったりします。
※この世界の島原の乱、司さんの言う通り随分と歴史が違っちゃっていますこの顛末も追々。
※関白豊臣秀次、延命ルート。これ(お次さん)が勝利の鍵だ!
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