10.文化財を大切にしよう!(白目)
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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色々あって私は歴史をいじくり廻してしまった。
その結果…
織豊期から江戸時代にかけての巨大建築物が、何か凄く残ってしまったのだ。
「折角立てたんだからぶっ壊すのも勿体ないし~」と時の権力者にゴネて、「良き事も悪しき事も後世の教訓として残すべし」というご法度を制定させてしまったのだ。
未来から来た私の知見を重宝して下さった時の権力者達の御威光でそれはお守り頂け、幕藩体制を廃し天皇家による中央集権、西欧化の大波が押し寄せる中でも維持され、その結果が。
海外から「タイムマシンミタイダナー」と観光客が押し寄せる今の日本になった。
本来の歴史であれば、日本で一番の歴史スポットである京ですら、おっと「京都」ですら電信柱とモータリゼーションの坩堝と化し、「婆娑羅」の極致である京都タワーや、その中の吹き抜けで怪獣が戦えそうな京都駅が賑わっていたのだが、今や京都は景観条例が厳しく敷かれている。
京市民の不満はタラタラらしい。元々新しい物好きな京町衆、金閣も聚楽第も「婆娑羅」の極致なんだから、今になって古い物の中で生活させられ続けるのもなんだかなあって事だ。
もしかしたら京都人の、新し物好きのパワーを奪ってしまったのかもしれない。
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後、何にしても日本は火災が多い。海外でも贅を尽くした宮殿が火災や政変で内部が破壊され、一件立派な外見をしていても中は壁真っ白、なんてケースが多い。
それでも外装がしっかりしてれば持ち主を変え内装は時代を変え命脈は繋がれていく。
日本だと躯体自体が消えてしまうのだ。
これも宜しくないなあと試作した避雷針やスプリンクラー…当然人力の。
これを信長公に進言したら採用された。
お蔭で天守や五重塔への落雷が長く夏の風物詩として物見遊山の対象になってしまった。
「今年もお山の天守は雷様に勝ちなされた」なんてのが挨拶代わりになったりね。
スプリンクラーも活躍したもののこちらは不評だった。
威力は覿面だった。城や寺の人々が堀や池の水を噴き出すポンプを人力で回し、屋内外から火を鎮める。
そこまでは良かった。ただその後が、臭かった。
池や堀の水の質など推して知るべし。
まあ、大抵は装飾の少ない奥向きや執務室が火元なので表具の総取り換えで事は済む。
しかし火が表向きに廻れば、華麗な障壁画や金細工、極彩色の欄間も哀れ堀や池の水の洗礼を受ける事になる。
「些事也」と時のお上は評して下さったものの、何だか凄くガッカリした表情を見るにつけ「いっそ全部焼けた方が諦めが付くんだろうか?」と疑問に感じた物だった。
結局、「人死にが出るより余程マシ」「建物全部作り直しよりマシ」だと思う事にしました。
ここ東京も、本来の歴史では江戸時代数回に亘る火災に震災、近代化と空襲で何とも不格好な巨大都市になったものだったが、色々やっちゃった後に戻ってみたら。
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パラダイスでした、花の東京でした、はい。
400年間、白と黒と青銅の天守が巨大都市の中央に聳え、その周辺を白亜の櫓が囲み、幕府の廃止と共に解体された大奥や中奥、執務の建物が解体されたと言え、表向きの巨大な御殿も大屋根も堂々と聳えている。
本丸の背後、本来の歴史であれば明暦の大火で焼失した後火避け地として森林となっていた吹上郭の御三家の、白地に金細工や極彩色で彩られた御殿群も美術館や迎賓館に転用されている。
本来の歴史では知る人ぞ知る存在だった絢爛豪華な御三家御殿。
今や関東圏の遠足に、他地方の修学旅行にと、江戸城と共に定番のコースとなっている。
将軍家守護の巨刹にして江戸城南北の護り、寛永寺に増上寺も京の社寺に負けず観光スポットとなっている。
その分、本来の歴史では東京最大の歴史スポットだった浅草寺が、池上本門寺並の「地元の名所」に落ち着いてたりする。
その方が地元の下町っ子達にはいいのかも知れない。
戦災で何千の男女と共に米軍に焼き払われる事も無く、紅い柱の観音様は健在だった。
そして「古い物を活かそう」という構想の下、都電も健在だった!
文明開化の際、「都市部の中心に自家用車が充満すると交通が破綻する」と進言し「都市中心部即ち江戸城内(本来の歴史の世田谷区・中央区周辺)は専用道路以外自家用車進入禁止、中心部周辺に安価な大駐車場を設置しそこまでは電車で」と、今でいうパークアンドライドを推進する様建白した結果、都電は都民の足として健在だ。特に観光客に愛用されている。
本来の歴史では、終戦後に困窮した東京市が商店や道路にしてしまった江戸城の堀。
これもこの歴史では健在なので、水上バスが新橋とか数寄屋橋とか呉服橋(東京駅周辺)とかを往来し、通勤や観光に利用されている。
首都高は地下を無理ないカーブで設計され廻っている。
随分と首都の景観を狂わせてしまったが、結果オーライだ。
この時代を生きる若者が幸せそうだ、それでいい。
そう自分に言い聞かせる事にして温泉に浸かった。
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