壮大なる秘史をテーマにかかげた本作。しかしそんな入り口とは正反対の、人間の矮小さや薄汚さを、この作品は容赦なく描き出しています。そんな人間を、とりわけ主人公の心理と行いを、醜いものと断じるべきでしょうか?それに心を動かされることによって、歴史=人の営みの深みを味わうことができるのかも知れません。
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実際に読めば、導入と最初のストーリーから既に今作が確かな歴史的基盤の元に作られた作品だと分かる。それくらい歴史的ロマンに溢れた作品だ。実際に有るのか無いのか、そんなことが気にならないくらいには、世界観が丁寧に作られていて、読者自身が古文書を読み解き、直接遺跡へと赴いている気分になる。不思議発〇やインディージョーン〇といった作品に観られる現在の価値観と太古の伝説が交錯していくさまが面白い小説だ。