第4話

「小鳥遊!俺らを囲め!」


直ぐさま小鳥遊に囲むように言う。

小鳥遊は俺の声の圧に少し気圧されながらも、3人を囲む大きな壁ことシェルターを作り出した。

その2秒後、辺りの温度が急激に上昇し暴風の様な音が聞こえる。

先程見た炎の渦が来たのだろう。


「何これ熱!」

「デカい炎の渦が飛んできてんだよ!しかもあの化け物とは違う奴が出してる!」

「あ、それリーダーのかも。」

「味方ごと灰にするつもりかよ!」


直接当たってないとはいえ、シェルターの中の温度は上がり続けており、蒸し焼き状態になりつつある。


「う〜ん…あ、そろそろ止めるって。」

「何で分かるんだ?」

「使い魔からの連絡。」


さっきも使い魔って言ってたな。

少し待つと、音が収まったので外に出る。

辺りを見ると床や壁、天井が真っ黒で扉は溶けて変形し、ガラスは全て割れている。


「…地獄か?」

「このシェルターよく耐えたね。」


女の方を見ると、化け物を盾にしたらしく生きていた。

しかし、無傷では済まなかったようで左腕が焦げている。

化け物は死にかけだ。


「くっ、まさかアイムが炎で負けるなんて。」

「そいつの能力はあくまで放火。」


渦が飛んできた方向から、夕陽のような色をしたパーカーを着た1人の男が現れた。

口から炎を垂れ流した、真っ黒で狼のような生き物を連れて。


「炎の質なら、こっちの方が上だ。」

「…まさか、あの子達の仲間があの有名なFWファイヤウルフだなんて。」


女は負けを確信したのか、無事な右腕を上へ向けて降参の意を示した。


「私の負けね。でも、すぐトドメを刺さないのはナンセンスじゃないかしら?」


女がそう言った瞬間、徐々に体が透けていく。


「転移?!」

「仲間がいるのは、アナタ達だけじゃないの。」


消える瞬間、女はこちらに向かって一枚のカードを投げてくる。

カードには arsonist放火魔 アカネ と書いてあった。


「私の名前、覚えておいて。次は逃さないから。」

「いや、もう来んな。」


完全に消えた。

男は女ことアカネが消えたのを確認すると、こちらに近寄ってきた。


「3人とも大丈夫だったか?」

「ちょっとリーダー、なんで私たちごと燃やそうとしたの!」

「え、いや、2人なら避けられるかな〜って、」

「この人がいないと死んでた。」

「ちょ、2人ともごめんって〜。」


…この人、尻に敷かれるタイプだな。

葵と小鳥遊に詰め寄られて謝り倒している。

それにしゃべり方も少し変わった。

さっきのはカッコつけていたのだろう。


「ところで、アンタがリーダーなのか?」

「あ、んん!そうだ、俺がこの2人のリーダーだ。」

「いや、そのキャラ付けはもう無理だろ。」

「…リーダーの暁月あかつき しょうです。」


恥ずかしそうに縮こまっている。

後、今気づいたがこの人まぁまぁでかいな。

180超えてんじゃないのか?


「ひとまず、ここ離れない?」


葵の提案を聞き、辺りを見渡す。


「…そうだな。」

「あ、君の名前は?」

「黒瀬 魁斗って言います。」

「黒瀬君ね。もし今日のことが気になったら、ここに来て欲しい。」


暁月さんから一枚の紙を渡される。

それには住所が書かれていた。


「ここに行けば分かるの…あれ?」


3人から目を離した隙に、その場から消えていた。

驚きながらも、小鳥遊の能力だと理解できた。

おそらく条件が揃ったんだろう。

再び紙に視線を落とす。


「…行くしかないか。」


あの女の口ぶりからして、俺はまた襲われる。

なら、最低限の知識と防衛手段は持っていても良いはずだ。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナインキング 阿保踊 @retr0s_luck

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ