第8話母の思いと願い
バーベナ 自宅
「スズラン、あまり無理しなくていいのよ?お金なら私のほうで稼ぐから心配しないで」
お金のことは正直いえば助かっている。でもスズランにはなにより学園生活を楽しんでほしい。友達もいないことも知っている以上言わずにはいれなかった。
「ありがとうお母さん、でも大丈夫!お母さんを少しでも助けたいし何より働いているとすごく楽しいんだよね」
「・・・・スズラン」
嘘だ・・・・ずっと一緒にいればわかる。きっと魔術が使えないことを少しでも遠ざけたいのね。
一通りの魔術の発動条件や感覚についても教え終わったが使うことができなかった。
魔力放出病、常に魔力枯渇状態のためあの子は使えなかった。
あの子はひどく傷心したが、それは私もだった。あの人の最後のお願いの一つ『魔術を教えてほしい』というお願いを聞くことができなくなってしまったのだから・・・・。
だからせめてもう一つのお願い、『スズランを頼む』これだけは何があっても守らないと。
「そういえば今日喫茶店にパンジーさんがきたんだよ?コーヒーを飲みながらちらちら見てたけど注文したかったのかな?」
パンジーという名を聞いてどきりとした。
「パンジーさんってご領主様の娘さんの?」
「そうだよ。友達と一緒に来てたから話しかけなかったけどね」
「・・・・・そう」
スズランには言ってないけどあの子とはタイム命日の墓参りの時に会っている。対面で会うような仕事はできないが戦死者に対する墓参りくらいはできる。
その時にスズランのことをいろいろ聞いているし近況も教えている。学園入学初年度から毎年続いている。
私に気を許したのか、愚痴なのか。それとも罪悪感からかわからないがスズランへの思いも教えてもらった。でも口止めされているしなによりいうつもりはない。何かあったら力になってあげてという程度にとどめている。
「きっとパンケーキでも食べたかったのかもね?あまり気にしなくてもいいと思うわ」
そういって私はごまかした。
「友達の誰かがダイエットでもしてたのかな?」
スズランがパンジーさんに悪感情を持たないようにしないと・・・・。
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