5 暗殺者
〈語り部〉ミルフィオリは
セーフティーネット
天界へ帰る
「よかった。戻れそうじゃ」
思わずミルフィオリがつぶやくと、「えっ」と、
「帰ってしまうのか」
「今回は事故のようなものだから。いや、はっきり事故だから。また、改めて正しい天女が来る」
「オリは天女さまが、いいっ」
「まだ、なんも、いっしょにしとらん。これから、都見物とか、イノシシ狩りとか、年越しとか、楽しいことを、いーっぱいしたいと思ってた」
「都見物と年越しはわかるとして、イノシシ狩りは女子受けするのか?」
「し、したかったんだぁぁ」
「われは、まだ学生の身だからな。天界に戻って勉強を続けねばならぬ。今のままでは、天女(仮)。
『 ミルフィオリ
〈語り部〉セーフティーネット
ミルフィオリの頭の中に響いた。
その飛行艇は救援隊だろう。
「天女さま?」
ミルフィオリの袖をつかむ
「別れのときが参った」
枯れ葉と小枝を踏みしめて湖へと向かう。〈音〉
〈語り部〉
ミルフィオリも最後は根負けした。
「木立に隠れておれ。そう、そこならよかろ」
(
〈語り部〉ミルフィオリが湖にたたずんでいると
一瞬、夜空の色が虹色に変わった。
次には湖の水面の上に、木立の高さほどの銀の正八面体が浮かんでいた。
正八面体の一角が開いて現われたのは、
すらりとした銀の全身タイツの赤い髪の女だった。
「ミルフィオリ天女。ご無事でしたか」
赤い髪の女は、うっすらとほほ笑んだ。
「レダ天女か。
女はミルフィオリの友であった。
一歩、湖へと歩を進める。
〈語り部〉そのとき、レダと呼ばれた女の手から放たれたのは、
幾本もの輝く細い針だった。〈音〉
考えるよりも早く、ミルフィオリは飛び
針は、かかかと、
「……‼」
「レダっ!」
〈語り部〉天女は、感応という対話ができる。
レダはミルフィオリの友だった。
幼稚舎から、ともに学び語らってきた年上の
そのレダからミルフィオリは、あふれでる憎悪を読んだ。
今、知る。
姉のように慕っていた女の、
昨日や今日のことではない自分へのにくしみを。
ねじれ、からんで、おどろおどろしい。
「レダ天女。あなたはわたしを、それほどまで憎んでいるのか!」
「そうさ。おまえは、わたくしが欲しかったものを、やすやすと手に入れていく。おまえさえいなければ――」
「知らなかった」
「気取られるほど浅はかではないわ」
〈語り部〉ミルフィオリはレダに距離を詰められぬよう、後ろを取られぬよう、
レダもミルフィオリを追って来た。
「わたくしは、あなたを目標としていた」
〈語り部〉ミルフィオリは、まだ信じられない。
レダが自分を
「さっさと追い越した」
レダは自嘲した。
「わたしたちは共に、
「その総帥が、おまえを
「わたくしは断った」
「ああ。そうだってね。そうして、こっちに譲ってやるってかっ! むなくそ悪いんだよっ! 天女のようなツラしやがってっ!」
レダは、ついに素を現して来た。
「だって、天女だ! まだ(仮)だけどっ」
ミルフィオリも応戦する。
「天女さまーっ」
〈語り部〉下界の木陰から、
それがミルフィオリに、わずかばかりの隙を生んだ。
レダが見逃すはずはない。
銀の針が、ミルフィオリの肩をかすめた。〈音〉
もっと
しかし、レダは追って来ない。
おもむろに
「はははっ。ウサちゃんが蜂の巣になるよっ」
「卑怯者っ」
〈語り部〉ミルフィオリは大きく旋回して、
その間もレダは、いたぶるように
「レダっ、やめろっ。あなたが殺したいほど憎んでいるのは、わたしなんだろっ」
〈語り部〉ミルフィオリはレダと
立ちはだかった。
「つくづく、その天女面、うっとぉしいわぁ」
レダは吐き捨てた。
「それでは
〈語り部〉レダが言い終わらぬうちに、
ミルフィオリは空中後方抱え込み宙返り3回転ひねりを決めた。〈音〉
「わんっ!」
「何のためらいもないんかいっ」
〈語り部〉その隙にミルフィオリは、
うずくまった
「急所は、はずれてるな」
〈語り部〉
(針は天人の思念の塊だ。思念の強さで残留する。その間に傷は深くなる)
「だ、い、じょうぶ、だか、ら」
「死ね!」
レダの手のひらから再び、輝く細い針が放たれた。〈音〉
「許さない!」
〈語り部〉ミルフィオリは、レダに向かい直った。
真っ向から立ち向かう。
レダの放った輝く針が、ミルフィオリを襲う。
そのすべてをミルフィオリは、風の
「わたしは、もんのすんごく、腹がたってる! たたんで、のして、箱詰めにしてやる!」
〈語り部〉その通りにしたんじゃそうな。
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