第11話 |魔法絶対主義者《マギアイスト》

 

 ウェクトルをダンジョンから助けた事件から2週間ほどの時間が流れていた。

  

 その間は特に大きな事件などはなく、誰しもが不審な火事やダンジョンの異変に意識を向けようとしなくなっていた時だった。


 「ネルさーん、この朝刊の見出し見ました?」


 俺の持っている新聞には"大捕物!警魔隊!炎の逮捕劇!"という記事がデカデカと載っている。

 

 「ああ、見たよ。魔法絶対主義者マギアイストの幹部数名をダンジョン内で捕まえた事に関する記事だろ?」


 「そうですそうです。それにしても魔法絶対主義者マギアイストってなんなんですか?」


 

 「!?君は魔法絶対主義者マギアイストという組織を知らないのかい?」


 「すいません。まだ帝都に住みだして半年も経っていないものでして。」


 「そういえばそうだったね、なぜか君はもう何年も帝都にいると勘違いしていたよ。という事はちょうど半年くらい前にも今回みたいな大捕物があったことは知らないんだね?」



 「はい、初耳ですね。そこまでしないといけないほど危ない組織なんですか?その魔法絶対主義者マギアイストというのは。」



 「魔法絶対主義者マギアイストの連中はね、その名の通り魔法を第一とした理念、理想を掲げた組織でね。魔法を神から貰った神聖なものと崇めているのさ。だから余計許せないんだろうね、魔法を禁止するこの帝都。いや帝国を。」

 

  

 「具体的には何をやらかしたんですか?


 「50年前にアンチマテリアルフィールドの完成。そして帝都内での発動の法案が可決された時に、人質300名をとって病院に立てこもったんだ。魔法を禁止されるのを恐れてね。」




 「禁止って言ったって、他の主要都市や帝都の中で使えないだけで。小さな町や村、ダンジョンでは普通に使ってもいい事になってるじゃないですか!もちろん人に危害を加える魔法の発動は禁止ですけど。バカなんですか!?その連中は!」


 

 「まぁまぁ、落ち着きたまえよ。私に当たられても困るってものさ。当時の帝君はテロリストとの交渉を拒否。結果犯人を含む322名の命が失われた悲惨な事件の出来上がりという訳だ。

それからだね帝国と魔法絶対主義者マギアイストとの戦いは。」



 「……‥許せませんね。その連中。」



 「そんなおっかない顔しなさんな。君が気に病む事じゃ無いよ。そもそも何故アンチマテリアルフィールドが必要なのか彼等は理解していないんだ。テロリスト、他国の工作員、感情の高まりによる魔法の行使または暴発、これらを防ぎ帝国国民の命を守るのには必要な措置だったんだよ。」


 

 「たたでさえ広い帝都ですからね。魔法という、いつどこで爆発するか分からない爆弾を見張り続けるには人手も金も法も当時はすべてが足りていなかったということですね?」


 「そういう事さ。だからもういっそのこと、

<魔法なんか使えないようにしてしまえ!>

という連中と、

<いいや魔法という恩恵を最大限に活用すべきだ!>という左翼の連中との戦いの歴史なんだよこの50年は。」


 「……くだらないですね。どこかで折り合いをつける事はできなかったんでしょうか?」


 「無理だね。それをするには互いに血を流しすぎたんだよ、愚かな事にね。この戦いは帝国が滅びるか、魔法がこの世界から無くなるまで続くだろうよ。だから君もこれ以上深く考えるのはやめとく事だね。君まで心を病んでしまうよ。」



 「……そうですね、これ以上考えるのはやめにします。ありがとうございますネルさん。」


 

 「うんうん、その調子だよクロード君。さぁ魔法のかわりに生活を豊かにする、より良い魔道具を作るという使命を果たそうじゃないか。」


 「そうですね!誰もが笑って暮らせるすごい魔道具を作ろうじゃないですか!ネルさん!」


 「フフフ、それはどんな魔道具なんだい?

困ったやつだな君は…」

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