438. プラファード二日目
コリニアス王弟の出方を探るため、わざとプラファードのすぐそばで野営をした。
その結果、翌朝には敵軍が思いっきり罠に引っかかっている。
うん、大漁だ。
「私が言うのもなんだが、リリィとその従魔がいれば、野営の警戒を偏らせることでここまで見事な結果が出るとは」
「人って意外と単純なんですね。守りの薄いところにはなにかあると思いそうなものなんですが」
「そうも言っていられないのが軍なのだよ」
ヴァードモイ侯爵様に説明を受けるが、やっぱりいまいちよくわからない。
今回はプラファードの側面側に警備の穴を開けておき、そこにタラトの蜘蛛の巣が落ちてくるようにしたんだけど、それでほぼすべてが捕まえられたようだ。
タイミングはキブリンキ・サルタスたちに任せていたし、取りこぼしもキブリンキ・サルタスによって捕まっていたんだけど、逃げられた兵士はいないらしい。
本当に待ち伏せは強いな、私たち。
「ヴァードモイ侯爵閣下、捕虜の尋問が終わりました!」
「よし、話せ」
「ええと、よろしいのでしょうか? リリィ様とその護衛の皆様もいるのですが」
「いまさらなにを言う。今回の夜襲を抑えたのもリリィだ。隠しごとなどする必要もあるまい。この場で情報共有を行っておき、必要に応じて策を練る方が早かろう」
「わかりました。今回、我が軍を襲撃してきた軍ですが、クレドリアス直下の軍人のようです。プラファード公爵家の兵は含まれておりません」
「そうなのか? 市街の守備には使われているとの報せを受けていたので、プラファード公爵家の兵も混じっていると考えていたのだが」
「どうにも、プラファード公爵家の兵の動きが鈍いようです。プラファード公爵直々に、プラファードの防衛に専念するよう指示が下ったらしく、攻め手に出るのは拒否したとか」
「ふむ……」
ヴァードモイ侯爵様はあごに手を当て考え込んでしまった。
確かにこのタイミングで動きが鈍るっていうのもおかしなことだよね。
都市防衛を考えるなら、このタイミングで夜襲をかけた方がいいはずだもの。
「……ヴァードモイ侯爵、少しよいか?」
「なんでしょう、プラム殿。まさか……」
「ひとり帰ってきた。状況報告に来たらしい」
「わかりました。お前たち、下がれ。内密な打ち合わせを行う」
「はっ!」
ヴァードモイ侯爵様の兵が全員出ていったあと、プラムさんの影から別働隊として行動している吸血鬼族の人が飛び出してきた。
なにかトラブルかな?
「ご報告いたします。我々はプラファード公爵の別邸を制圧。無事に人質を救出いたしました」
「本当か!?」
「はい。ですが、人数も多く、街中を目立たないように移動するのは困難です。一度、市街地に入り注意を引きつけてください。その隙に、私たちが用意した宿まで人質全員を移動させます」
「わかった。よろしく頼むぞ」
「はい。それでは」
彼女は、また影へと溶け込み、いなくなった。
ともかく、これで私たちが次にしないといけないことははっきりと決まったね。
街の中に堂々と入って敵の注目を浴びる役目だ。
どちらにしても、もうすぐ回答期限だし、さくっとはいっていってしまおうかな。
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