436. 北都プラファード
大きな街に行き当たっては捕虜を解放して素通りし、また次の大きな街のそばを通るときには捕虜の解放を行いながら、旅は順調に進んできた。
解放された捕虜のほとんどは、すぐにどこかへは行かず、すぐそばの街へ入れてもらおうとしていたようだ。
しかし、自分たちと同じ勢力とはいえ、兵士を一度に何百人も受け入れる余裕はどの街もなく、その受け入れだけでリソースが食い潰される。
もちろん、私たちのことを追いかける余裕なんてない。
ヴァードモイ侯爵様の狙いはこれか。
「捕虜も減りましたけど、余計な戦闘を避けられているみたいでよかったです」
「元より、捕虜など千もあれば足りる。巨大な氷塊に囚われていた人間が生き返る、そして、それを自在に操れる存在が我らの手の内にいると知らしめればいいのだからな」
「なるほど。ところで、そろそろですか?」
「ああ。もう数日もすれば、王弟のいる街、プラファードだ。いまは北都などと名乗っているらしいな」
「北都、なんとも仰々しいですね」
「国を治めることを考えればそうでもないだろう。それに、通り名としてならば、ヴァードモイも商都だ」
なるほど、肩書きってその程度の意味しかないのか。
まあ、私が所属している国も公国で公都があるからおかしくはない。
王弟は北の支配者だから『北都』なんだね。
「さて、ここから先の手筈だが、あまりこちらから仕掛けるなよ?」
「わかってますよ。あくまで自衛だけですよね?」
「そうだ。我々が北都に到着することを合図として別働隊が動く。そうでしたな、プラム殿?」
「いかにも。儂の配下とリリィから借りたキブリンキ・サルタスたちが、プラファード公爵家の者たちと公爵家派閥で人質に取られている家族を助け出す。儂らは時間稼ぎのための囮じゃ」
「そういうことだ。あちらから問答無用で攻めてきたのであればやむを得まいが、基本的には対話で時間を稼ぐ。あの街にいる兵士も大半はプラファード公爵家の者と聞く。プラファード公爵さえ自由になれば形勢は逆転するからな」
正直、ここから先はプラファード公爵の主導でやってもらうのが望ましい。
その方が新しい国の指導者として示しが付くし、圧政を強いていた元王族の打倒というのはなんとも絵になる。
従って、私たちの役目は、プラファード公爵がクーデターを起こすまでの時間稼ぎがメインになるわけだ。
この国……というか、私の安寧のためにも、頑張りますか!
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