433. 進軍再開
王弟の態度が決まったことで、私たちも再度進軍することを決めた。
その際、プラファード公爵を助けるための別働隊としてプラムさんの仲間ふたりとキブリンキ・サルタス数匹が離れることとなる。
これは仕方のないことだし、その程度の護衛が減ったところでなんの問題もないから、気にせず先に進ませてもらおう。
「それでは、ロベラウド公爵閣下、お世話になりました」
「いや。王弟の始末は任せる。私は第三王子派閥の方をなんとかしよう」
「はい。お任せを」
私たちが王弟派閥を瓦解させることまで決まったら、再び氷の山と氷の檻を馬で引きながら王弟派閥支配地域へと向かう。
途中、何度か襲撃に遭ったけど、それらはすべて警戒に出ていたキブリンキ・サルタスたちの手により発見され、わざと襲撃を受けることで襲撃にあったという事実だけを残し、新たに檻に入れられることとなった。
なお、装備から見てやっぱり王弟派閥がほとんどらしい。
本当の賊らしき連中も混じっているようだけど、騎士と兵士がこんなにいる一団を襲ってどうするつもりだったのか?
旅は順調に進み、いよいよ王弟派閥の支配地域が近づいてきた。
王弟派閥の支配地域に入る前に砦が建っているらしいので、それをどう突破するかについて打ち合わせ、という名の確認だ。
「リリィ、そなたとタラトに任せてもよいのだな?」
「はい。砦の兵士は凍りづけに、ついでに砦も凍りづけにして誰も通れないようにしましょう」
「それは頼もしいが、我々の逃げ道もないな」
ヴァードモイ侯爵様は苦笑しながら注文をつけてくるが、そこまで簡単な話ではない。
それに、ヴァードモイ侯爵様も砦を凍りづけにして誰も通れないようにするのは賛成なのだ。
私たちが通り抜けたあと、北西部方面を支配している第三王子派閥から追っ手を出されたり、砦が氷漬けのままだったりすると、第三王子派閥から攻めてくださいと言わんばかりの状況となってしまう。
それを防ぐためには、守りの要である砦そのものと周囲を高い氷の壁で取り囲み、誰もよじ登ってくることができないようにするのだ。
もっとも、この作戦をとってしまうと、私たちも逃げ場がなくなってしまう。
タラトがいればすぐに溶かしてくれるけど、タラトがいないと逃げられない。
まさに背水の陣ってやつだ。
ある意味、仕方がないのでやるのだけどね。
「さて、明日の朝には砦に着く。気持ちの整理はついているか?」
「いまさらですね。面倒な仕事はさっさと終わらせましょう」
「わかった。ともかく、今日はここで野営だ。お前の護衛たちが気を抜くことはないだろうが、気を付けろ」
「はい。任せてください」
敵の砦のすぐそばに陣取って夜を明かすだなんてヴァードモイ侯爵様も大胆である。
誰も反対しないあたり、もう慣れたものなんだろうけどね。
なんにせよ、明日からが勝負になる。
ここからが本当の始まりだね。
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