3

目の前にある牛丼・・・。




つゆだくの牛丼・・・。




それも、大盛り・・・。




それを五感全てで見て、感じて・・・




食べた・・・




食べた・・・




食べて・・・




「美味し~い!!!

この前のテイクアウトも美味しかったですけど、やっぱりお店で食べるともっと美味し~い!!!」




「それあるよね!!」




隣に座った矢田さんが大きく頷きながら牛丼を食べていく。




「これから家でも夜ご飯食べるのに、急に牛丼とか言わないでくださいよ!!」




「あれは狙ったつもりはなかったけどね!

ここよく来るの?俺たまに来てるよ。」




「来てませんよ。

牛丼屋に1人で入れませんし、女友達は入ってくれませんし、男友達という男友達も特にいないので。」




「そうなんだ?

じゃあ、たまに俺が一緒に食べに来るよ。

男友達じゃなくて彼氏候補ってことでよろしく!」




そんなことを言ってきたかと思ったら・・・




「俺の家の最寄り駅前に安くて美味しい焼き肉あるよね、知ってる?」




「知ってます!!

いっっっつも並んでる所!!」




「あそこ“社長”のパーティーの一員の店だから、予約取れるから今度行ってみる?」




そんな・・・




そんな・・・




魅力的でしかないことを言ってきて・・・。




それには笑いながら頷いてしまった。




「“社長”って、うちの会社の“社長”ですか?」




「いや、俺の派遣元の会社の“社長”。」




「派遣元の“社長”と仲良しなんですか?」




「俺だけじゃなくて全社員が“社長”と仲良しだよ。」




矢田さんがそう言って、凄く嬉しそうな顔で笑っていた。




そして、結局・・・




「家ここなんだ?」




私の家の前まで送ってくれた・・・。




めちゃくちゃ嬉しそうな顔をして一軒家の我が家を見上げている矢田さんを見て・・・




言ってみることにした。




「矢田さん、友達だったら大丈夫です。」




友達だったらいいと思う。

この人と友達になったら楽しいと思う。

男友達という男友達もいない私だけど、この人とだったら友達になりたいと思った。




そう思ったけど、矢田さんは物凄く怒った顔と様子になり・・・




「俺は、好きな女の子と友達になりたいなんて意味不明なこと思わないんだけど。」




そう言われてしまい・・・




「じゃあ、親友・・・?」




「・・・・」




「・・・大親友?」




「・・・・」




矢田さんがめちゃくちゃ怒った様子にどんどんなってくるので、それには思わず笑ってしまう。




こんなに分かりやすい様子になって、それはそれで面白いと思うから。




「矢田さん、私は恋愛とか出来ない女なのでごめんなさい。」




怒りまくっている矢田さんにそう言うと、私を長めに見てきた。




「俺も恋愛とか出来ないタイプだけど、それでも的場さんのことが好きだから。

この派遣の期間だけだから、それは絶対に約束する。」




そう言って・・・




恋している瞳で私を見てくる・・・。




私を、見てくる・・・。




それは私にとって苦手な瞳で・・・。




苦手でしかない瞳で・・・。




悲しくなるくらい苦手な瞳で・・・。




そんな瞳で、矢田さんが口を開いた・・・。




「ガンガン攻めさせてよ。

ガンガン攻めた結果それでも無理だったら潔く諦めるから。

諦めるから・・・。」




そんな台詞を、苦しそうな様子で言ってきた・・・。




私に言ってきた・・・。




私に、言ってきた・・・。

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