「新言語」
「5」
「11」
「27」
「1356」
「1356、1486?」
「9」
「6――8」
マスク社会が当たり前になって十数年。
マスクがあるがゆえに、人の言葉が聞き取りづらいことがちょっとした問題になっていた。
何度も繰り返せば伝わるものの、仕方ないとは分かっていても、少ないながらもストレスが生まれてしまう……。小さなそれも、積み重なっていけば精神を蝕むほどに強力な不満へと膨らんでいき……、やがて火種となり、大きな暴力事件へと繋がっていった事例は少なくない。
早急に対策をしなければならないのだが……じゃあマスクなんて外せばいい、とすれば、話は簡単だったが、世界中を苦しめている感染症のウイルスは、未だに猛威を振るっており、まだまだ、透明のパーテーションを取り外すことはできないのだ……、マスクなんて以ての外である。
マスクの上に、さらにパーテーションまであるとなると、そりゃ聞こえないわけだ……しかも長文となれば、さらに聞き取りづらい。
マスクがなければ口の動きでなんとなく言っていることが分かったりするものだが、その手も使えない。表情も参考にはできず、声だけを頼りに聞かなければいけないのに、長い文章を聞き逃さないようにするのは、至難の業だ。
しかも相手の滑舌が悪ければ最悪だ。
聞き返しても聞き取れないことなんてざらにある。三回目までならいいだろう……でも四回目以上は? さすがに聞き返せない……店員なら尚更だろう。
商品はなんとか、番号で言ってくれるからまだマシになっているけれど…………ん?
そう、そこで気づいたのだ。
会話も、番号ですればいいのでは?
そして生み出されたのが、番号での会話だ。
よく使う言葉は番号が若く、限定された状況で交わされる会話ほど、大きな数字になっていく。これならだいぶ聞き取りやすい……、若い番号なら指で示すこともできるわけで……――ただ、番号と一致する言葉を覚えなければいけないという課題は残るが……。
全員が、だ。
じゃないと意思疎通なんてできないだろう。
……それも、慣れだろう。
それに、統一しろ、と言っているわけではない。
一回目で言って伝わらなければ番号で伝える、という救済措置みたいなものなのだ。
……結果、どちらがよりストレスなのかは、まだはっきりとした結果は出ていない……。
―― 完 ――
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