第11話エリス=トワイライト

「「エリス様?」」


2人がそう聞き返した瞬間俺はエリス様の設定を思い出して、まずいと思い自分の口を手で押さえた。


「どうして口を押さえるのですかアクト様?」

「シャロも気になる〜!」

「いやえーっと、それは……その〜」


俺がそう2人に攻められていると、置いてけぼりを喰らっているエリス様が、いきなり名前を呼ばれた事に驚き石像の様に固まっていたが、ようやく意識が戻ると俺達に、と言うよりかは俺に声をかけて来た。


「どうしてあなたは私の名前を知っているのですか?」

「いやーえーっと、何でかな〜?たまたまじゃ無いかな?」


俺が状況的にどう考えても嘘だとわかる状況でも、こうやって嘘をつくのかと言うと、それはこの少女エリス=トワイライト第一王女の設定的に、俺は、と言うかここに居るメンバーだと、地面で伸びているキール第一王子しか知らず、その他知っているのも王族そしてそのお世話をしている者達しか、本来ならば彼女の存在知らないはずなので、もし俺がその存在を知っていたとなると、大問題で済まないレベルでやばい事なので、俺は是が非でもエリス様の名前を呼んだのは偶々だと言う事にしないといけないのだ。


と言う訳だからエリス様、そんな興味深々な目でこちら見ないでくださいお願いします。


そうして俺が全力で知らないフリをしていると、今度はシャーロットが声を上げた。


「エリス…エリス…………あ!触手の……フガフガ」


触手と言う言葉を聞いた俺は、今度は自分のでは無くシャーロットの口を両手で押さえ、耳元で質問した。


「しゃ、シャロ?何処でそれを?」

「えっとお兄様の部屋にあるお本で……」

「なるほどわかった。……頼むからその本の事は父上と母上には黙っていてくれないか?」

「じゃあ今日家に帰ったら一緒にお風呂に入ってくれるなら、シャロはこの事は誰にも言いません!」

「………………分かった。ただしお互い水着を着てと言う条件付きでも良いか?」

「約束ですよお兄様!」


ここで改めて、エリス=トワイライトの紹介をしよう。

彼女はヘン学の通常ヒロインでは無く、追加DLCのキャラで、今までのキャラはエロ9割にシリアス1割の配分だったのだが、何故かエリス様だけはガチガチのシリアスシナリオで、俺同様エロ目的でやっていた男子諸君は、そこで何度も心を折られただろう。

彼女エリス=トワイライトには生まれた頃から悪魔が憑いているとされ、そんな存在が王族に居てはいけないという理由で、本編ではエリス=トワイライト第一王女では無く、王城に勤める執事の娘エリンとして学園に通っていた。

だがそこまでして隠されていたエリス様だったが、実際には悪魔憑きでも何でも無く、女王の座につけなかった1人の貴族の令嬢が、その腹いせにエリス様を殺害しようとした所で失敗し、その時に咄嗟に誤魔化す為についた嘘が、エリス様の持つ特殊な魔法関連のアレやこれやが混ざり合った結果、エリス様はそんなつまらない嘘で別人としていけなくなり、エリス様の事を知っている者からは悪魔憑きだと嫌煙されているのだった。


因みにエリス様のルートに行くには、まずはエリス様の双子の妹のアイリス第二王女の好感度を上げて、エリス様の存在を知ってから、キール王子と勝負してそこで引き分けになった後に、王城に行くと何故か執事の娘であるエリンが大層煌びやかなドレスを着て、王城を歩いているので、そこでは話しかけずに後をつけるとキール王子がエリンの事をエリスと呼び、そこに乱入する事でようやくエリス様のルートに入れると言う、攻略本片手にしてないと絶対に無理な鬼畜仕様となっております。


そしてシャロが言い掛けていた触手の王女エリスとは、何故だか知らないが他のキャラに比べてエリス様の触手シーンが多く、俺たちファンの中では触手姫とか呼ばれているので、多分その事だと思う。


と言うかシャロの奴はいつあの本の存在に気が付いたんだ?


まぁそんな事情と言うか裏話があるので、俺がエリス様の正体を知っているとヒッジョーにまずいのである。


「触手?」

「いえいえ、何でもありませんよ。ほら2人ともアイスクリーム食べに行こうか!今日は俺の奢りだよ!」

「やったー!アイス!お兄様ありがとうございます!」

「え?え?え?この状況放っておいて良いんですか?アクト様?」

「ええい!気にするな!あ、エリンさん王子が起きたら、暴漢と間違えちゃったごめんね。って伝えてもらってもいいかな?」

「あ、はいかしこまりました」

「それじゃあ頼んだよ」


そう言うと俺はいち早くこの場を立ち去ろうと、2人の背中を押してこの場から離れた。


「アクト様?結局さっきのは何だったのですか?」

「ユウリこれはお前の婚約者の俺からじゃ無く、公爵家長男として言わせてもらうが、自分より上の立場の奴の闇の部分なんか暴いても、百害あって一利なしだぞ」


俺がそう言うとユウリは何かを察したのか黙ったので、俺は王子を一方的に馬乗りでボコボコにした事や、思いっきり本人の目の前でエリス様の名前を呼んだ事を忘れる為に、やけ酒ならぬやけアイスクリームをした。

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