第22話 試験の結果は
「受かってますかね……」
エステルは眉をひそめ、自信なさげに呟く。
「大丈夫だって、最後の方はいい活躍だったしな、俺達!」
ラピはエステルの背中をポンと叩いて、笑顔を見せる。
「ありがとな、エステルもサシャも、そしてレクスも。俺達良いパーティだったぜ」
「私の方も、助かったわ。私の現状の力は出せた。これで落ちても悔いはないかな」
二人は満足げに笑い、拳を突き合わせる。
「そうだな。俺も良かったよ。リーゼの為にも受からないといけないけど、それを抜きにしても、俺達は良くやったよ」
「だな。つーか、ヴィクティムの野郎はもう帰ったのかよ」
ヴィクティムは試験が終了すると、そうそうに帰って行った。
それはもう、俺たちが気が付く間もなく。
「ったく、せっかく最後は協力できたってのによ。もし学院で会ったらいじってやる」
そうして、ラピ、サシャと一人一人去っていく。
「レクスさん、本当ありがとうございました」
エステルは深々と頭を下げる。
「いやいや、お礼を言われるようなことしてないよ」
「いいえ、そんなことないです。あのまま一人だったら、私きっと緊張で一日目も失敗してたでしょうから……。ラピさんはああ言ってくれましたけど、きっと私じゃ二日目は受からないでしょうけど、せめてお礼だけ言いたくて」
エステルはじっと俺の目を見つめる。
「だから、ありがとうございます。応援してますから!」
エステルは満足げにそう言葉を残し、去って行った。
まあ、俺としてはエステルは落ちるとはまだ断言できないと思うけどな。
こうして、俺達のラドラス魔術学院の試験は終わった。
俺はリーゼと合流し、そうして領地へと戻った。
◇ ◇ ◇
「ねえねえねえ、暇暇暇~~~!!」
リーゼは俺の頭の上に顎を乗せ、むっと口を尖らせながらそう駄々をこねる。
「だったら勉強しろよ。試験が終わったとはいえ、入学してからも魔術の勉強は続くんだし」
「え~せっかく試験で詰め込みまくったんだからさ、少しくらいゆっくりしてもいいじゃん!」
試験から二か月、俺達は平穏な日常を送っていた。
相変わらずリーゼは天才で、そして俺はその護衛。
試験の後も変わらず続く日常。俺達は来年の学院生活に備えていた。
結論から言うと、俺達は見事合格した。
リーゼは当然の結果だった。もちろん、誰もが分かっていたことだ。だが、俺の合格は屋敷の殆どの人にとって予想外だったようだ。
だが、一人だけ期待していた人が居た。そう、俺に合格を命令した、リーゼの父、ローデウスさんだ。
ローデウスさんはまた書斎に一人俺を呼ぶと、満足気に祝ってくれた。
俺たちは来年から、ラドラス魔術学院へと入学する。
まだ見ぬ多くの魔術師たち。試験の時のような事件が、きっと今後も起こるだろう。俺はそれでも、リーゼを守るため、陰で戦うのだ。
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