第32話 窓際の両片思い

 (※ヴィオリーチェ視点のお話です)





 原作ゲームでの攻略キャラだった人物の一人、メイナードに興味を持たれてしまったようだとアルカが話をしてくれたのが一週間ほど前。

 その後、何やら彼に付きまとわれているので一旦放課後のお勉強会はお休みで…と言う連絡があって、わたくしは少しだけガッカリもしてしまった。

 わたくしとアルカは、帰る寮は一緒であるとは言え…、寮の交流会の時にアルカに対抗意識を持ってわたくしに突っかかってきた女生徒がいたように、アルカが誰かから嫉妬などの感情で攻撃されるようなことがあっては大変だ…と、あまり大っぴらに二人きりのところを見せない様に…と心掛けていた。

 わたくしとしては、もう少し寮でお互いの部屋を行き来したりしても良いかも…と思ったりもするのだけれど、それであの子に迷惑が掛かったら…と思うと、自分からは言い出せないでいたのだ。

 だからこそ放課後のお勉強会は、わたくしとアルカが唯一二人きりでゆっくり話が出来る時間だったのに…。

 アルカは、メイナードに関しては絡まれているのは今は自分だから、とりあえず出来るだけ関わらないで済むように努力しつつ様子見るね…!と話してくれたのだけれど、その後、アルカとメイナードの二人が急接近しているなんて噂も聞くようになってしまった。

 アルカもだけれど、メイナードはただでさえ目立つ人だから、そのせいでアルカが変なトラブルに巻き込まれてしまうのでは…?とわたくしもさすがに不安に感じ始めていた。

 こんなことなら、アルカの入学前にわたくしが彼と友好関係を築いて置けば良かったのかも…なんて、今更なことを悔やんでしまったりもする…。

 アルカにはつい見栄を張って余裕ぶった態度を見せてしまったけれど、本当は不安で心配でたまらないのはわたくしの方なのよね……。


 そんな風に一人鬱々とした物思いに耽っていたところだった。

 ふと二階にある教室の窓際の席から中庭を見下ろすと、丁度そこを通りかかったであろうアルカの後ろ姿が見えて、その偶然にわたくしは少しだけ心が弾んだ。

 ふわりとした淡いピンクの髪がぴょこぴょこ跳ねるように歩いている。

 その姿が何だか愛らしくて、少し荒んでしまっていた心が癒されていく気がした。


(…アルカはああ言っていたけれど、やっぱりわたくしからも、メイナードに話をしに行ってみましょう)


 これはいつも頑張っているアルカの苦労を少しでも減らしてあげたいって思うからであって、彼がアルカにちょっかいを出しているのが単純に気に食わないなんて理由では決してありませんからね?


 


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