第31話 ストーカーはダメ!絶対!!
「…え、あの…、その…アルカ、それ…何…?」
酷く困惑した調子でジャンくんは、私の後ろに居るそれを指さす。
それはやっほ~みたいな顔でひらひらと片手を振っている。
「いや~。それって酷いな~。ジャンくん、仮にも先輩なんだけどな、俺」
「…それは知ってますけど…」
「ストーカーです」
「アルカちゃんも酷い!」
昼休みの中庭。私は、何故か後をついてくるド派手紫色ヘアーのヴィジュアル系チャラ男メイナード先輩を伴って、ジャンくんのところに赴いていた。
ジャンくんはいつも通りの場所で焼きそばパンを食べているところで私の襲撃を受け、今ポカーンとした顔で私とストーカー先輩を見ている。
ちなみに私はこの時点で非常に機嫌が悪く、見るからにカリカリしていたと思う。
つい先日はヴィオリーチェとの甘い語らいで大分気分良くなれていたのに、それから私の身に降りかかってきた出来事は最悪の最悪だった。
「いや、実際ストーカーまがいですよ、先輩!私は先輩と一緒にご飯を食べたりしないし、一緒に帰ったりもしないってこんなにこんなに断ってるのに毎日毎日!!」
…そう、ここのところ毎日、このメイナードは私の後にくっついてくるようになっていた。
やれ一緒にお昼を食べようだ、一緒に帰ろうだ、ヴィオリーチェとの勉強会に自分も参加したいだのエトセトラエトセトラ…。うおー!!!!迷惑!!!!
私が何度迷惑だから止めろと本気で訴えても、この人は聞く耳を持たない。いくらいっても糠に釘。全然聞きやしないのだ。
出来るだけ彼をヴィオリーチェに近づけたくない私は、結局そうなると私自身がヴィオリーチェと過ごす時間を減らすしかなく、非常にストレスが溜まりまくる…!!
こんなストーカー行為が許されていいのか?という思いで、魔法学園の教員に助けを求めてもみたけど、悲しいかな相手にされもしなかった…!!!
…ううう…っ!このゲームが作られた頃はまだストーカーに対しての危機意識が高くない時代だったっけ????
いけません…いけませんよ、こんなことでは…。か弱い乙女の身をもっとちゃんと法律が守ってくれないと…。
「あ、あのさ、アルカ。ストーカーされてるのはわかったけど、それで…なんでここに…?」
私が怒りに我を忘れて、ストーカー…もといメイナード先輩にガウガウ吠えたてているところで、ジャン先輩がおずおずと発言する。
「あ」
「…俺のこと忘れてただろ…」
「うん……」
「アルカちゃん、ジャンくんとも仲良しだったんだね。魔性の女~~~♡」
「……見・て・の・通・り、私の精神はストーカー先輩のおかげで滅茶苦茶です。なのでこう…なんとか、ジャンくんに助けて貰えないかなって思って…」
「えーーー…………」
助けろって言われても…と言う空気がビンビンに伝わってくる。その気持ちは私にもわかる。しかし、本当にこの人どうしたら良いのかわからないので、とりあえず知り合いに助けを求めにきた、そう言う感じなのである。攻略対象同士の縁でどうにか…どうにか…ならんか…。
「いや、そんな人を疫病神みたいに邪険に扱わないでってば。俺はさ、単にアルカちゃんのことを知りたいだけなんだよ。悪いことしないし」
「…こう言ってるけど…」
「別にわざわざ知って貰うようなことないです」
「こう言ってますが……」
「それを決めるのは俺だからさ?」
「…………」
「…………」
「…………」
遭遇して数分でこのダメな感じを察した様子のジャンくん。
私たちの間にどうにもならない諦観を帯びた沈黙が流れる。
しかし、諦めて試合が終了しても人生は終わらないのである。
「…いや、まぁ、でも先輩、アルカも凄く困ってるし、俺の知ってる彼女のことで良かったら俺からもお話しますし、もうちょっと勢いを緩めてあげては貰えないですかね」
「お、良いね。ぜひ聞かせて貰いたいな」
私は始終ジト目。メイナード先輩は興味を惹かれた様子でジャンくんの提案に頷いた。
「えと、とりあえず、メイナード先輩はアルカのどういう部分が気になるとか知りたいって思ってるんです?」
「彼女のことならなんでも知りたいと思ってるけど————まぁ、彼女ってなんだか不思議と人を惹きつけるみたいなところがあるだろう?それに何か秘密があるんじゃないかなって思ってるわけだ」
「随分と愛されたもんだなぁ」
ジャンくんは、私に視線を向けてから軽く苦笑して、私とジャンくんがどんな風に出会ったとか、仲良くなった経緯とか、私が入学当初からヴィオリーチェの熱心なファンで、彼女とお近づきになるためにジャンくんに魔法を教えて貰ったことなんかを話していった。
…あれ?客観的に聞くと私の方もちょっとストーカーっぽくない?????と思わなくもなかったけれど、ヴィオリーチェは別に迷惑がってなかったしセーフとしよう。いいね?
「アルカちゃんストーカーじゃん」
「お前が言うなぁ!!!!!!!」
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