第8話 魅惑の"個人レッスン"ルート!!

「それじゃあ、まず大前提として、原作でもヴィオリーチェが死なないルートである、アルカが秘宝を継承するルートを目指して行きます!!」


 私とヴィオリーチェの話題は、これからお互いがどうしていくかの作戦会議へと移っていた。

 ヴィオリーチェにとっては、ずっと心配していた自分死亡ルートを潰す算段が付いたようなものだからだろうか?これまでよりも表情が明るくなっている気がする。


「ただ、それって、つまりは"各種属性魔法を全部高レベルで習熟して、学園トップのヴィオリーチェの腕を追い越し自他ともに認める学園一の魔法使いになる"ってことなんだよね…」


 ゲームでやる分には、セーブ&ロード機能があったから根気さえあればパラメーター調整して登場キャラ全員同時攻略&秘宝継承ルートも全然無理じゃなかったけど、

現実で実際にそれをやるとなると、E判定から一年で志望校合格みたいなハードさを感じる。

 口で言うのは簡単だけども、改めて考えてみるととんでもないな…!実際、目指すのは落ちこぼれから学園No1!なんだからそういう感じなんだけど…。


「自信、ありませんの?」


 ヴィオリーチェが不安そうな眼差しを向けてくるものだから、私は咄嗟に首を左右に振った。高飛車で意地悪な、私が好きになったヴィオリーチェはこの世界にはいないのだけど、目の前にいる心優しく麗しいヴィオリーチェにだってこんな悲しい顔をさせたくはない。


「違う違う!いや、違わないけど!!…自信の有る無しじゃなくて、だから…」


「…!」


「ただ、ゲームでの流れをなぞるなら、アルカの成長イベントって、攻略対象キャラとの親密度をあげてその中で覚える魔法だったり教えて貰う魔法も必須だったじゃない?だから、そうなると、まだ出会ってないキャラ達ともさっさと知り合って仲良くなっておかないとダメなのかなー…とか考えてて…」


「……そう言えばそうでしたわね…。…さすがに細かいイベント内容やタイミングまでは思い出せませんけれど……」


「そ・こ・で!…私、ちょっと思ったんだけど…」


 人差し指をぴんと立てて提案する私を見るヴィオリーチェの目は、期待と不安が入り混じった色をしている。


「本来だったら男の子たちにイベントで教えて貰うはずの魔法も、ヴィオリーチェに教えて貰うのって駄目かな?……それなら彼らの好感度やイベントスケジュールに左右されないでどんどん進めていけると思うし!」


「あ」


 ヴィオリーチェの口から、何処か間の抜けたような声がぽろりと零れ落ちる。

 盲点だった、とでも言いたそうな顔。


「そうですわね…!ええ、わたくしで良いならもちろん教えてあげられますわ!」


 さっきヴィオリーチェが一緒に魔法の勉強を…と言っていたことで思いついたのだ。

 そもそもアルカがゲーム内で使えるようになる魔法は、秘宝クレッセントを入手後に使えるようになる魔法以外は、この段階でもすべてヴィオリーチェは習得していたはずだ。(なにせ学園一の魔法使いなので!!)

 私たちは原作ゲームを愛するあまり、ついつい原作ゲームに沿った選択肢の中で行動を選ぼうとしてしまいがちだが、この世界には選択肢なんて出やしないのだから、と、そのままを追いかけなくたっていいのでは?と思ったのだ。

(…とは言え、既に風妖精の魔法を覚えるために、ジャンくんを追いかけまわしてイベントを起こしているように、基本的に原作での条件を揃えれば、同じようにイベントを起こすことは出来ると言うことがわかったのは収穫ではあるんだけど…。)

 そもそもゲームと違って、ヴィオリーチェは最初から非常に友好的かつ協力的な存在なんだから、その力を貸して貰わない手はないってね!


「アルカ、貴女って人は本当に発想が自由ですのね…」


 はふ…と、感心したようにヴィオリーチェはため息を零す。


「わたくしなんて、秘宝を継承しないためには、魔法の勉強をそもそも止めてしまえばいいのでは?と考えはしたのに、結局そこまで元のヴィオリーチェから離れるような選択は出来ないでいましたのに…」


「でも、ヴィオリーチェが、しっかり魔法を学んでくれていたからこそ、今度は私がヴィオリーチェから教えて貰えるんだもん!結果的には良かったってことじゃない?何もヴィオリーチェが引け目に感じることはないと思うな…!」


 彼女を励ましたかったのもあるが、基本的には本音の言葉だ。

 それに、攻略キャラのイケメンたちと仲良くなっていくのも興味はあるけど、ゲームの攻略と自分の恋愛ではやっぱり別だし、推しの命がかかってるんだから、何よりも優先されるのは推しの安心と安全だよ。当然だ。


 それに―――――――


「ヴィオリーチェから魔法の個人授業をして貰えるなんて、凄く嬉しい!!!」


 これは全然邪な感情ではなくて、純粋過ぎる感想だよ!

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