第二十七話 あの馬鹿を止める方法を探せ【神坂蒼雲視点】
馬鹿げている。
このことを桐井の部隊辺りにリークすれば対GE民間防衛組織経由で作戦を中止させることはできるが、あいつはその事も予測して即座に作戦の登録なんてしないだろう。
作戦が登録していない以上こんな話はよくある与太話で終わり、その後であいつが登録しても対GE民間防衛組織は冗談だとしか思わない。
「ねえ、明日の作戦って成功しそうかな?」
「成功して欲しいが、流石にこんな作戦に身を投じる程俺は無謀じゃないんでな」
「そうだよね……。私も参加したいけど、やっぱり怖いよ」
いつの間にか近くに来ていた
こんな重要拠点でもない場所にある
それはつまり昨日犠牲になった奴らを見捨てるって事なんだが、あいつらもAGE活動をしているからには覚悟の上だろ?
「問題はこの後だな。楠木はどうするつもりだ?」
「わ……私? 私は……」
「腹を決めてなけりゃ、明日作戦には連れて行って貰えないぞ。
「やっぱりそうだよね……」
迷うさ。迷って当たり前なんだよ!!
誰も彼も
あいつは異常だ。GEに対する恐怖がない。それに
あいつの両親はいったいどんな育てかたをしたんだ? 戦闘マシーンじゃないが、GEとの戦いで頭のネジがごっそり抜け落ちてんじゃないかと思う事も多々あるからな。
「俺は
「
「少なくともあいつは
あんな格好でAGE活動をしているのも、全部
さっさと告白して付き合っちまえばいいのに、何を考えてるのかいまだに告白もせずにソロ活動を続けてやがる。
あいつがいればうちの部隊ももう少し層が厚くなるんだがな……。
◇◇◇
「お断りしますわ」
「即答かよ!! しかもお嬢様モードじゃねぇか」
ここは学校近くにあるカラオケボックス。防音は効いているし、どこかにこの話が漏れないようにするにはここが一番だったんで、
おいおい、あんな作戦じゃ最悪|
「当然ですの。此処には貴方達しかいないのに、あんな粗暴な言葉遣いをする必要がありませんわ」
「へぇ~、
「こいつは元々いいとこのお嬢さんだからな。うちの部隊に来りゃあんな格好と話し方しなくて済むだろうに」
学校での姿しか見た事のない楠木には新鮮だろう。
あの格好や話し方は
そこまでするほど想っている相手が、こんな無謀な作戦でGEに敗れて石に変えられても良いっていうのか?
「話を戻しますわ。
「今回のあいつはまともじゃない。竹中の親父さんを助ける為に成功率をどう見積もっても何割か下駄を履かせているんだ」
「ありえませんわ。
「ちょ……。え? そんな言い方って、もしかして
いや、
俺もそう思いたいが、あいつだって人間だ。今回の件の様に無茶を言い出す事だってある。
「それこそありえませんわ。わたくしはいつだって
「千載一遇で絶好のチャンスなのは認めるさ。多分この機会を逃せばAGEによる
「そうですわね。
「それも理解してやがったか。あいつの行動原理は結局全部
あいつが十歳の時にGEに襲われて石に変えられた母親と姉。
その二人を支配下に置く
AGE活動をしているのもその為だし、あんな使いにくい特殊小太刀を使い続けているのも現状では
あいつは特殊トイガンじゃ
「お爺様にお願いして防衛軍を動かす事を考えた事もありました。ですが、それでは今までの
「お前も大概だな。そこまで
「話は平行線ですわね。わたくしの説得は無意味です。では、これで……」
それだけ言うと部屋から出ていきやがった。
誘ったとはいえ、ルーム代も……。
「テーブルの上に代金は置いていったみたいだね。現金なんてみるのは久しぶりな気がする」
「いつの間に……。あいつの動きも大概だよな」
あの
これであいつを説得できる線は消えた。
元々
「で、どうするの? 覚悟を決めて明日の作戦に参加する?」
「迷いがある以上、あいつが連れて行ってくれるとは思えない。下手すりゃ置いていかれるさ」
「そこまでするかな?」
「そこまでするさ。不確定要素なんて無い方がいいからな」
俺達が覚悟を決めて参加すればあいつは歓迎するさ、すこしでも戦力が欲しいだろうし。
だが、迷いがある奴を連れて行って、
作戦に参加する以上迷いはしないが、このまま参加するのが面白くないのは確かだ。
「あの作戦に参加する気があるんだったら、明日の六時に永遠見台高校第二女子寮の前に車で迎えに行くが」
「その時間って事は
「あの
「弾はいつものグレード二?」
「流石に俺の経済状況じゃ、あいつみたいにグレード五の弾なんて用意できない。多少威力は落ちるが
このグレード二の弾もGE対策部で配られた分だしな。
いつ異常発生が起きてもいいように俺たちもそれぞれの学生寮に予備の装備を用意している。
使い慣れていないが特殊トイガンも予備の
「わかった。私も
「きつい作戦になるが、何とかするしかねぇしな」
多少の手土産じゃないが、
このやり方はかなりブラック寄りのグレーなのは間違いないが……。
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