第34話 トラブル発生
教室に続々と生徒が入って来る。昨日班分けをした効果だろうか挨拶をする生徒の数が多い。俺に挨拶をしたのは上園と塩野だけである。相川と川原はすぐに自分の席に座った。相川、上園、川原はあいうえお順だと前になる苗字なので席が近い。俺は窓際の一番後ろの席なのでわざわざ挨拶をするのが照れ臭かったのだろう。でも、それは俺にも言えた事である。俺は偉そうに二人が挨拶をして来るのを待つ身分ではない。みんなと仲良くしたいのであれば自分から積極的に挨拶するのが常識である。俺は昔と変わらず小心者でどこかで言い訳を探す卑怯者なのかもしれない。結局、俺は自分から挨拶をしなかった。そう簡単に人は変われない。
「おはよう六道君!」
「お・・・おはよう???」
俺の2つ前の席に座った男性が唐突に挨拶をしたので俺はビックリした。
「俺は御手洗 深夜(みたらい しんや)だ。よろしくな!」
人物紹介 御手洗 深夜(みたらい しんや) 黒髪マッシュの瞳の大きな可愛らしいイケメン男子 身長165㎝ クラスのリーダー的存在。
御手洗はさわやかな笑顔で声をかける。俺がいなければ御手洗はクラスの中で一番イケメンであろう。顔面偏差値で例えるならばレベル3の下といったところだ。レベル3と言えばクラスの中に1人や2人はいるイケメンレベル、御手洗はレベル3でも下であるが十分にイケメンである。
「こちらこそ」
「昨日はなぜ遅刻をしたのだ」
「ちょっと家庭の事情で遅れてしまったんだよ」
「そうなんだ。それは大変だったな」
茜雲さんがチカンに遭遇したことは秘密にしておいた方が良いと俺は判断した。
「そうだな。入学式に参加出来なかったのは残念だけど仕方がない」
「入学式はくだらない話ばかり聞かされて最悪だったぜ。遅れて正解かも」
入学式とは学生にとっては退屈でつまらないものかもしれない。俺もそう思っていた。しかし、親にとっては大事に育てた子供が高校生になる記念すべき日である。俺は笑顔で御手洗の話しに相槌を打つが、本心ではくだらないものでなく大切なものだと思っていた。
「そうだな」
「そう言えば六道は遅刻してきたから余り物の班になっていただろう」
「ああ」
「俺の班に来ないか?お前なら大歓迎だぞ」
「今から変更は無理だろ?」
「俺が先生にかけあってやるよ。1人ブサイクなヤツがいるからそいつと交代したらいい」
「でも、その人に悪いからやめとくわ」
「いやいや、あんなクラスの底辺の集まりにお前は似合わないぜ。俺たちの班のが絶対に楽しいぞ。女子もかわいい子ばかりだぞ」
御手洗の班はこのクラスの陽キャがそろった班である。御手洗が自分とつり合うクラスメートを激選して作り上げた美男美女の集まりだ。1人不細工なヤツがいると言っているが決してブサイクではない。このクラスの中ではイケメンの部類に入るが俺と比べたら明らかに見劣りするのでブサイクといったのである。
「俺も御手洗の意見に賛成だぜ」
御手洗と俺が話をしていると御手洗の後ろから体を割って入って来た男がいた。
「裕也(ゆうや)、お前からも誘ってくれ」
「もちろんだ」
人物紹介 木原 裕也(きのはら ゆうや)身長171㎝ 栗毛の短髪ツーブロックの体格の良い男性。目つきが鋭くやんちゃをしてそうな雰囲気である。
「六道、絶対こっちの班のがおもしろい!榊原に鳥谷もノリが良いしバーベキューはめっちゃ盛り上がるはずだ」
「お誘いは嬉しいけどやめとくわ」
俺は元陰キャだ。いきなり陽キャグループに入るにはかなり抵抗がある。初めは陰キャグループで体をほぐしてから徐々にステップアップする方が良いと思う。内面はレベルを上げる事ができないので、無理をしたらボロが出るだけだ。それに、俺のせいで班を外される人にも申し訳ないし、班を移動したらクラスでの印象も悪くなるかもしれない。しかし、クラスの陽キャグループのリーダーの誘いを断るのも今後のクラスでの立場も悪くなるかもしれない。
「なんでだよ。絶対にこっちの班のがイケてるぞ」
「そうだぜ。こっちの班に来いよ」
「一度決まった班を変更するのは良くないと思うし、それに、俺のせいで班を抜けるはめになる人にも悪いし」
「お前は真面目か!」
「そんなしょうもないこと気にするなよ」
「おい!六道が嫌がっているだろ」
御手洗の姿が大きな影で覆われる。
「あぁ!どこが嫌がっているんだよ」
御手洗が振り返ると上園が仁王立ちしている。
「六道は断っているだろ」
「上園、いつから俺にそんな生意気な口を聞けるようになったのだ」
御手洗は上園にガンを飛ばす。御手洗は身長165㎝体重53㎏それに対して上園は身長176㎝体重は90㎏体格差は歴然としている。しかし、明らかに体格的に有利な上園の顔が弱々しく見える。
「上園、高校デビューでもするつもりなのか?」
「・・・」
次は木原が上園の顔を睨みつける。木原は身長171㎝体重65㎏で筋肉質な体系である。中学時代から何かしらの格闘技をして鍛えているのであろう。木原が睨みつけると明らかに上園は動揺をしている。
「六道が・・・嫌がっているから・・・」
「あぁ!何を言っているのか聞こえねぇ~」
木原は大声で上園の言葉をかき消す。上園は目はオドオドして体を丸めて萎縮していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます