十六話『黄色い鳥』
別の部屋。布団に座るトルトスと、布団の横に立つアルフ。アルフが口を開く。
「すまねぇ、この姿になってから力に制限がかかっている事を忘れてた…」
「ワシはどうなっても構いません」
「貴女が無事で良かった」
「…いつもありがとうな」
「いえいえ、こちらこそじゃよ」
ボソッとつぶやくアルフ。ほほえむトルトス。
「どうもありがとうねぇ」
コロポックル達から受け取ったコーヒーにミルクと砂糖を入れ、ミルクコーヒーにして飲んだ。甘い甘い!美味しい美味しい!
「テイトさんが竜に成る方法を教わる人物は"フォス"って言う竜人の男性っす」
「テイトさんの家から見て、南の方にある小さい島にたった一人で住んでるんすよ」
島に一人で?どんな人なんだろうね。南の島かぁ。そう言えば今住んでる家に引っ越してからは全然遠出してなかったな。出掛けるとしても
「竜の力をコントロール出来て、竜に成れるようになったらそのまま魔界を目指すと思うんで、当分の間帰って来ないと思うんす」
「なんなら無事に帰って来れないかも知れないし、何かやり残した事は無いっすか?」
そうだよな。これから向かうのは魔界で、ただの遠足じゃない。帰って来れないかも知れないんだよなぁ。やり残した事…。
思い出した。街の守衛さんに親父の荷物を預けてあるんだった。取りに行かなくちゃ。
…もう二度と会えないかも知れないならば、街のみんなに親父の代わりに、最後の挨拶がしたいな。…親父の事も伝えておきたい。
「ミルフさん僕、街に行きたいです」
青い扉が開き、中からアルフが出てくる。
「あぁ?何でわざわざ街なんかに行きてぇのか知らねえけどよ」
「あっ、姐さん」
「アルフさん!」
「カラスとサルもテメェを狙ってたんだ、他の魔人もテメェを狙ってんじゃねえか?」
「街なんかに行ったら、どこから攻撃されるか分かったもんじゃねえし危険だろうが」
「それでも、どうしても行きたいです!」
「お願いします!アルフさん!」
アルフの事を真っ直ぐに見つめる。
アルフが大きな溜め息を吐いた。
「…はぁー、ルイボルも頑固なヤツだったが、アイツに似てテメェも中々頑固だな」
「いいぜ分かった、街に行くのを許可する」
「やっほ〜い!ありがとうアルフさん!」
「ミルフさんもありがとうねぇ!」
「うぇーい!良かったっすねテイトさん!」
ミルフの包帯でぐるぐるの手と握手した。
「ただし一人じゃ危険だ、アタシも行く」
「ついて来てくれるんですかぁ!」
「それは頼もしいや!アルフさんありがとうございます!」
腕を組み、ふんっ!とそっぽを向くアルフ。
「出口を開けておいてやった」
「そこから
「オオカミ、案内してやれ」
「はいっす!」
アルフの身体が段々と薄くなって消えた。現実世界に戻ったのかな?ファンタジー!
「こっちっすテイトさん」
ミルフに指示されて一つの扉の前に来た。両開きの茶色い木の扉だ。表札には"出口"と書かれている。
「そこの扉から現実世界に戻れるっす!」
「オレはもうちょっとここに居るんで、また今度会いましょう!」
「うん!分かったよぅ!トルトスさんにもよろしくねぇ!」
扉を開けて中に入る。中にはトンネルがあり、まぶしくて先が見えない。他には矢印の立て札。"お出口はここから"と書いてある。
まぶしい光の中を進む。次第に目を開けていられなくなる。再び目を開けると、自宅のリビングだった。現実世界に戻って来たの?
「行くぞ」
声のする方を向く。こちらを見つめるアルフ。アルフと共に自宅の外に出る。一日経って外は朝。アルフが自身の首から下げるネックレスに手をかける。
光出すネックレス。光が収まり出て来たのは、黄色い鳥。見た目はただの鳥。ただ、サイズがデカい。大人二人は余裕で乗れそう。
「タクシーだ、背中に乗れ」
タクシー?と思ったがまぁいいか。先に乗ったアルフに続いて背中に乗車…違う。乗鳥?させてもらった。フカフカであったかいね。
「街はどこにある?」
「あ、この道を真っ直ぐ行った所です!」
「タクシー飛べ」
「ピヨピヨピヨ!」
身体は大きいけど、声はそこら辺にいる小鳥と同じだ、かわいい!バッサバッサと翼を羽ばたく。飛んだ?うぉ!飛んだ!落ちないようにしっかり掴まる。
これまでの十七年の人生で初めて空を飛んだ。いや、普通なら空なんて一生飛べない人がほとんどだろうなぁ。青い空に黄色い鳥。
頬をなでる風が心地いい。遠くの方まで見える!でっかい山だ!あっちには滝かなぁ?とにかく興奮しています!うおぉ〜すげぇ〜!
歩くと約二時間かかるロブノーまでの道のりだが、今回はあっという間に着いた。
町に直接降り立つと、驚く住人も居ると思ったので、町の入り口から少し離れた所に降ろしてもらった。
黄色い鳥、タクシーにお礼を言う。
「タクシーさん、どうもありがとうねぇ!」
「ピヨピヨピヨ!」
「助かった【
タクシーが黄色い光になってネックレスに吸い込まれていった。何度見ても不思議だな。
町の入り口まで来た。深呼吸。心を落ち着かせ、眠たそうな守衛さんに話しかける。
「こんちはぁ〜」
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