第19話 助けた理由

「本人はまだ目を覚ましてないが どうする?」

幸樹こうきは、健一けんいち君に声をかける。

「一目だけでもお願いします。」

幸樹こうきは頷き、ついてこいと言い、健一君は後に続く。幸樹こうきはこちらを見たが「元気になってからで」と断る。

健一けんいち君が、香織かおりちゃんの所に行くと、幸樹こうきとアリーサが気を利かせ、自分の所に来た。

「ここに来て大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。それに助かったんだから、二人にさせましょ。」


・・・


・・・


・・・


幸樹こうき、聞きたい事があるがいいか?」

「なんだ?」

「なんで、俺を助けたんだ?」

「・・・あぁん、なんだ?」

聞き方が悪かったな。

「なんで、俺を優先して助けたんだ?」

「「・・・」」

二人とも黙っている。

やっぱりおかしいよな。俺はシュミール人に足を切られた。傷口が焼かれていたので、血は出ていなかったと思う。死ぬほど痛かったが。ただ、健一けんいち君の話しでは、二日ほど、あいつらは居たらしいから、正直、その状態で放っとかれて生きていけるのか?という疑問が生まれた。様は、あいつらが居る時に、危険を冒して、俺を助けたという、よく分からない結論が浮かんだ。


・・・


二人とも黙っているな。話しをしてくれないかも知れない。


「・・・お前だけじゃない。お前の息子も助ける予定だった。」

理由は分からんが、俺じゃなく、わたるを助けてくれよ。


「お前の息子の方は、運悪くシュミール人の軍隊に鉢合わせしてな、無理だった。・・・スマン。」

俺に頭を下げる幸樹こうきとアリーサ。

スマンだと!簡単にいいやがって!怒りで頭が真っ白になるが、彼らには非はない。

「・・・話してくれるのか?」

「ああ」


幸樹こうきとアリーサは、どうして自分を助けたのか、彼らの今の状況も含めて話してくれた。まず、アリーサの事についての話しがあった。


アリーサ、幸樹こうきは、今も他種族連合軍に所属しており、えんは切れていない様だ。アリーサは戦いを好まず、ひっそりと生きたいのだが、そうもいかない理由があった。父親が、他種族連合軍のリーダーなのだ。父親の名前はラース、エルフ族の族長であり、魔法に長けたエルフ族の中でも(英知の魔法使い)と呼ばれる人物だという。その才能を受け継いだアリーサも他種族連合軍には必要不可欠な存在となっていた。

「アリーサは、軍で何をしていたんだ?」

「私は・・・父と一緒に多くの戦闘を経験したわ。」

幸樹こうきがアリーサの手を握る。

「それに回復魔法が得意なんだけど、助けた日本人の中に医師がいてね、その人から医療技術を学び、私の回復魔法と融合する研究を始めたの。そこから、義肢や手術を含めた、今までにない治療が可能になった。これは、まだ私だけにしか使えない魔法なんだけど・・・だからこそ、戦闘が終わるまでは軍からは抜けられないの。」

幸樹こうきは握っているアリーサの手を見つめながら、俺に話す。

「・・・アリーサの力にどうしてもなりたくてな。それで俺も軍に所属している。」

「軍に戻らなくていいのか?」

「・・・あの女が動けるぐらいになったら、戻らないとかな。また戦闘が激化するから・・な。」

幸樹こうきは、自分が家から持ってきた妻の写真を見る。

「先頭になる前に、お前を軍に連れて行く必要がある。」

「・・・依頼者か?」

「ああ、シュヒールヒ=ラナールって聞き覚えは・・・ねぇよな。」

・・・誰だ。俺の足を切ったやつか。

「じゃあ、佐藤紘子さとうひろこは?」

「!」

なんで今、妻の名前が出る。5年前に死んだんだぞ!

幸樹こうきは、妻の写真を持ち上げ、眺める。

「・・・この人だ。お前と息子を助けて欲しいって言ったのは。」


・・・こいつは何を言っているんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る