第3話 デリ村
木造の古びて今にも倒れそうな平屋が30軒から40軒ぐらい点々とある。村の周りには魔物対策と思われる柵があるが、すでにボロボロに壊されており魔物が出る場所で無防備な状態となっている。
土が踏み固められた道を歩き村の中に入ろうとして、いきなり知らない人が話しかけて良いのか分からず躊躇ってしまう。突然のことに警戒され騒ぎになったりしないだろうか?大丈夫と思うが、あまりにもこの世界のことが知らなさすぎる。
少し様子を見たいので家の陰に隠れるように進んで行くと、人が集まっているのを見つけた。
馬に乗った兵士の周りにも兵士がおり、奥には男たちが暗い顔をしている。
村側には男性を中心に村人と思われる人たちがおり、その中で一際輝く可愛い美少女がいた。髪はワインレッドで腰まであるストレート、大きな目もルビーのような赤ですごく綺麗だ。年齢は12歳ぐらいだろう。
他の村人を見ても全員モデルや俳優のように整った顔をしている。ハリウッドスターと紹介されてもすぐ納得できる。ただ、全員痩せており、顔色は良くないし、着ている服は傷んでいる。とても十分な生活ができているようには見えない。
見つからないように近づくと男性と兵士の会話が聞こえて来た。
「兵士様、村の男たちを連れて行くのはやめてもらえませんでしょうか」
「こいつらは俺の部下として働かせる。ありがたく思え!」
「それだと魔物からこの村を守ることができなくなります」
「それを何とかするのはお前たちだろ。知ったことか!」
「中高年、女、子供でどうしろと言うのですか」
「うるさい!これ以上邪魔をするなら妨害罪で牢獄に入れるぞ!」
そう言って兵士達は村の若者を連れて出て行ってしまった。今度は残された村人たちが男性と会話を始めた。
「皆がいなくなって魔物から村を守れるのか?」
「食料や素材の調達はどうするのですか?」
「今でもギリギリなのにどうやって生きて行くんだ」
男性は困りながらも返事をする。
「これからどうするか検討します。決まったら連絡しますので一旦解散とさせてください」
言いたいことがありそうな雰囲気だったが、村人全員が帰っていき男性だけが残った。
男はかなり困っているようだ。少し話を聞いただけだが、いきなり村の男たちを連れていかれたら大打撃だし、それを補うだけの力も小さな村では無いだろう。
何となく大丈夫そうなので、男性に近づくとすぐに目が合った。
「初めて見る顔ですね。どちらから来たのですか?」
『向こうから来ました』
「どこかの村や町が魔物に襲われて逃げて来たということですかね?」
『おそらくそうだと思いますが、実を言うと何も覚えていないのです』
ここで適当なことを言って場所や状況を聞かれても何も答えることができないので、何も覚えていないことにする。その方がいろんなことを質問しておかしいと指摘されてもそれで通せる。
「それは災難でしたね。これから行く当てはあるのですか?」
『いえ、もしよければこの村で何かお仕事があれば紹介いただきたいのですが……』
「そうでしたか……。ここで立ち話もなんですし私の家に来ませんか?何もありませんが、村に来ていただいたので歓迎いたしますよ」
『ありがとうございます』
すぐ近くにこの村では大きい家があり案内されるが、だいぶ古びておりお世辞にも綺麗とは言えない。先ほどの会話にもあったように生活はだいぶ苦しそうだ。
せっかく上手く話をするきっかけがつかめたので、いろいろ話を聞いておこう。
「申し遅れました。私はドルフと申します。このデリ村の村長をしています」
『私はヒデと申します』
「この辺は魔物が多く危険なのによく無事でしたね」
『魔物に見つからないように隠れながら移動してきました』
「ローリー拠点が陥落してから多くの魔物が来るようになりました。これまで何とか撃退できましたが、男たちが連れていかれ次は難しいでしょう」
『代わりの人員を雇えるのですか?』
「冒険者や傭兵を雇うにはかなりの費用が必要になり、デリ村ではとても……。また、貴族が自分たちを守るために戦力を集めているのでそもそも人がいないです」
『この村を管理しているところが動いてはくれないのですか?』
「フォール王国が私たちのために何かをすることはありません」
『そうなると近隣の村や町と協力して対応でしょうか?』
「このデリ村から東にカフル村、西にメリディ村があります。最近連絡が取れてませんが、同じような状況で協力は難しいでしょう」
『支援と協力が無くて食べていけるのですか?』
「これまでは魔物や木の実を食べていました。今後は両方とも手に入れるのが難しくなり食料問題はより深刻になりそうです」
『田畑から食料を収穫できないのですか?』
「手入れする人手が無いので田畑はありません。今まではローリー拠点に様々な物資や人が移動していたので、デリ村は中継地点として武具整備、回復薬や旅用魔道具販売、宿泊、馬の世話などで生活が十分できていたのですが、今後は誰も来なくなるでしょう」
『魔物と戦う武器や防具は揃っているのですか?』
「村にいた男たちの武器や防具はありますが、扱えるものがいません」
『魔物と食料の問題解決が難しいなら避難しないのですか?』
「皆が若いか馬車があれば避難できますが、現状では町まで行くのは無理でしょう。また、仮に移動できても町は避難民で溢れていると聞いていますので町に入れてもらえないでしょう」
『このままでは餓死か、魔物に倒されるかのどちらかですね』
「どうするのかこれから考えます。一緒に何か紹介できるお仕事も探してみますが、それまでは空き家を用意しますのでそこにお泊りください」
『お気遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます』
近くの空き家に案内され、自由に使っていいと言ってくれた。おそらく連れていかれた男の家で使い古された剣と革の鎧が置いてあった。
何とか寝る場所は確保できたが、とても良い状況とは言えない。何もしなければ数日で食料不足により倒れてしまうだろう。
これだけ立派な森の中なので少し探し回ればたくさん食料はあるだろう。ただ、魔物がいるので何も考えずに収獲していたらすぐにやられてしまう。
アイテムボックスは触らずに土を収納できたので、うまく行けば隠れながら収穫できるだろう。明日はアイテムボックスを使って食料を探そう。
まずは皆に美味しいものを食べてもらうところからだ!
果物が取れたら可愛いあの子に持って行って、少しお話を聞いてみよう。村長だけじゃなくいろんな人から話を聞いた方が良いし、ちょっと話をするだけだからいいいよね?
------------------------------------------
何とか雨露をしのぐことができる場所を借りることができました
ただ食べるものが全くありませんのでまずは食べ物を探します。
皆さんは食料を探すならこれ!というのがありますか?
少しでも面白そうと思ってもらえたら応援と★お願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます