第27話 3章・学校入学編_027_遺恨

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 3章・学校入学編_027_遺恨

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 フウコに空から索敵してもらい、僕とオリビアちゃんは進んだ。

 上空から俯瞰できるフウコに案内してもらうと、すぐにヘビの魔獣に出遭った。

 長さが三十メートル、胴回りは直径一メートルくらいある巨大なヘビの魔獣だ。緑色をしているから、木々の葉に隠れるのが得意なのが分かる……でも大き過ぎるから隠れきれてない! さすがにここまで大きいと、木々の葉に隠れられないよね(笑)


「私の出番ね!」

「ヘビだけど大丈夫?」

「ヘビの肉は結構おいしいわよ。カンボジアとかベトナムなどの東南アジアでは普通に食べられているからね」

 さすがは元CAさん。世界の料理を食べ尽くしていそうだね。


「色からすると毒は持ってなさそうだけど、イノシシは火を噴いたから十分に気をつけてね」

「分かったわ!」

 オリビアちゃんはマントを取って僕に渡し、刀を抜く。鎧のアマテラスが木漏れ日に照らされ反射した光が魔獣の赤い目に入り目を閉じる。

 その刹那、オリビアちゃんは縮地のように一瞬で間合いを詰めて天神雷光を振った。

 魔獣の太い首―――どこから首かは分からないけど、頭部よりやや後ろが斬られて胴体と離れ離れになった。

 魔獣の頭部と体は、そんな状態でもしばらく動いている。キモい。

 頭部がオリビアちゃんを襲おうと飛びかかるけど、その攻撃が当たることはなく真っ二つになった。


「ヘビ肉~」

 この魔獣の死体を異空間にいれる。大きいだけあってかなり容量を圧迫するね。


「今日はこれで帰ろうか」

「えー。まだ早いわ」

「異空間の容量が今のヘビだけでいっぱいなんだよ」

「そこは気合で!」

「無理だって(笑)」

「しかたないな~。じゃあ、帰りに小型の魔獣と戦わせて。この天神雷光の効果を実戦で試したいのよー」

「今のヘビですれば良かったのに……」

 まったく困ったものだ。


 フウコに小型の魔獣を一体見繕ってと念を送る。了承の意が返ってきて、僕たちは引き返しながら魔獣を探した。


 すぐにネズミの魔獣を発見。この森で最も多く討伐されるのが、このネズミ型の魔獣だね。

 オリビアちゃんが天神雷光を振り上げる。

「来たれ天神!」

 天神様は学問の神様として有名だけど、他にも祟り神、慈悲の神、正直の神、そして雷神としても有名だった。僕の記憶だけどね。

 その天神を冠する天神雷光の刀身から稲妻が迸る。バチッバチッバチッと刀身から発する稲妻は小さいが、振り下ろせば……。


「天神の怒り!」

 ―――バリッバリッバリッバリッバリッバリッドッカーンッ。

 空気を裂き、大地を穿ち、目標の魔獣を一瞬で蒸発させる稲妻の奔流が森を大きく傷つけた。あまりの眩しさに、僕は両手でその光を遮るほどだ。


 両手を下ろして状況を確認するのだが……。オリビアちゃんの前に、抉られただれた地面があった。

 皇龍火炎剣の比ではないくらいの傷痕が大地に刻まれている。

 うん、オーバーキルだ。

「森の中は空気中の魔力が豊富だから、威力が激上がりしたようだね。森の中の魔獣討伐で天神雷光の効果を使うのは禁止ということで」

「そうね。せっかくの魔獣が蒸発しては、意味がないものね」

 魔獣を狩って、その肉や皮を有効活用するのが目的なのに、その素材が回収できないようなオーバーキルは完全にアウトだ。


 稲妻が蹂躙した距離はおよそ一キロ。火がついている木々に魔法で水をかけて消火をしてから昼食にすることにした。

 僕とオリビアちゃんはハンバーグ。フウコには先ほどのヘビ魔獣の肉を少し焼いて、塩胡椒で味付けして出した。

「ホーーーウ!」

「そうか、美味しいか」

 フウコはヘビのレア(焼き加減のレア)肉が気に入ったようだ。レアはフウコの希望で、素材の持ち味を生かせるのだとか……どこの美食家だよ(笑)


「ハンバーーーグッ! 美味しいわ」

 オリビアちゃんの顔の筋肉がだらしなく緩む。それでも美少女は可愛い。

 僕も美味しいと思うから、本当に創造神の加護があって良かったと思う。


 美味しく昼食をいただき、フウコは上空へ飛び立った。

「さて、帰ろうか」

「はーい」


 歩き出して一分も経過してないだろう。フウコから人が近づいてくると念が送られてきた。

「誰か来るね」

「ええ、私も察知したわ」


 しばらくして、女性が二人現れた。

 一人は三十過ぎのローブ姿の人で、もう一人は二十五歳くらいで剣士っぽいかな。

「凄い音がしたと思ったら、子供?」

 三十過ぎのオバサンからしたら僕たちは子供だけど、なんというか嘲笑うような声色に嫌悪を覚える。


「あんたたち、こんなところで何をしているんだ? ままごとならお家でしな」

 若いほう―――僕たちから見たらオバサンでも、三十過ぎの人よりは若い―――はあからさまに揶揄ってきた。


「貴方たちには関係ないわ」

 オリビアちゃんが僕の手を引いて、この場を離れようとする。でも若いほうが僕たちを通せんぼするように立ち塞がった。


「この先で何があったか知っているんだろ?」

「さあね。知りたければ自分たちで調べたらどうなの?」

「生意気なガキだね。あたしたちを怒らせたいのか?」

「ちょっと待ちなよ」

 三十過ぎのほうが僕たちの周囲をゆっくりを回る。舐め回すような嫌な視線だ。


「くくく。あはははは」

 三十過ぎのほうが、急に笑い出した。危ない人?

「そうかい、そうかい。あんたたちかい」

「このガキたちがどしたのさ?」

 若いほうが聞くと、三十過ぎのほうがオリビアちゃんを指差した。


「このメスガキには、ちょっとした遺恨があってねぇ」

「「???」」

 僕とオリビアちゃんは顔を見合わせて、思い当たることがあるのかと確認しあう。

 いったいこのオバサンは、オリビアちゃんにどんな遺恨があるのか?


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