第46話全軍突撃?


「サンドニ男爵軍のリンデンがベルメール男爵の首をとったぞ〜!」

「おおおおおおおお〜!」

「おおおおおおおお〜!」

「ひいいいいい〜!」

「ぎゃああああ〜!」


ベルメール男爵を討ち取った騎兵の勝ち名乗りが戦場に響き渡り、一気にサンドニ軍の戦勝の空気が場を支配する。

サンドニ軍はそれを見て全軍で押し寄せてきた。

大将を失ったベルメール軍が腰砕けとなり、瓦解してサンドニ軍に飲まれかける。


「ギルバートさん、出るしか無いよね」

「そうですな。これこそ天の采配でしょう」

「グラディス、旧リクエ軍をまとめたい」

「はっ、ラティス様さえいれば可能です。それにしてもラティス様は……神か」


グラディスがなんかおかしな事を言っている気もするが、今そんな余裕は一切ないので覚悟を決める。

本当はこの場から動きたくないしなんなら逃げ出したいがやるしかない。やるしかないんだ!

逃げ出したいという恐怖心を押さえつけ必死に空元気を呼び起こす。


「レクスオールの兵よ! いくぞ〜! これより我らが戦場! ベルメール男爵が討ち取られた今、仇を討つのは我らレクスオール軍だ! サンドニの首を上げるぞ〜! おおおおおお〜!」


隣に控えるギルバートさんが声を上げてレクスオール軍を動かす。

こう見ると俺よりギルバートさんが大将の方がいいんじゃないかと思ってしまうが、俺の役目はこれからだ。

後方からベルメール軍に向け大声で叫ぶ。


「ふ〜っ。  ベルメールの兵よ! 怯むな! ここにグリフォンの化身たるこのラティス・レクスオールがいる。サンドニの兵など、恐るに足らん! 我に集え! 我に従いサンドニの首を上げるぞ〜! 怯むな〜!!」

「元リクエ筆頭騎士グラディスである! 我らが将はここにあり! 集え! グリフォンの化身、いや神化身たるラティス様の下へ! 必ず勝てるぞ! 我らと共に〜!」

俺とグラディスの声に半数ほどの兵が反応し応え始める。

「ラティス様だ〜!」

「我らが将ラティス様がおられる」

「我らはラティス様と共に〜!」

「うおおおおお〜!」


その瞬間、ベルメール軍の士気が上がりサンドニ軍の動きが止まる。

行くしかない。ここで行くしか。

脚が、全身が震える。この状況、ひとりでどうにかできるもんじゃない。突っこむ。突っこむしかない。

レクスオールの兵を、そして俺に応えてくれた兵を信じて突っこむしかない。


「我はラティス。ラティス・レクスオールなり! 全軍突撃〜!」


恐怖感から声が上ずるが、必死で声を絞り出し、シュテルンの腹を蹴り後方からサンドニ軍に向け突っこむ。


「おおおおおおおおお〜!」

「続け〜!」

「サンドニの首を討て〜!」

「ラティス様に遅れをとるな〜!」

「ラティス様が来られた〜!」

「これで勝てる。勝てるぞ〜!」

「我らがラティス様に続け〜!」

「ラティス様を囲め〜!! 指一本触れさすな〜!!」

 

先陣をきった俺の周囲には進むにつれ兵が集まり、一塊の巨大な一団を形成し、その塊がサンドニの軍とぶつかり合った。

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