第11話 5騎聖
「ギルバート、どうしたら」
「若、いやラティス様お見事でございました。見事な一騎討ち。そして何よりその慧眼。このギルバート感服いたしました。さあ、リクエ軍に降るようお声がけを!」
思い出した。レクスオール戦記には俺に最も必要だった時間稼ぎの詳細は一切載っていなかったのにラティスがリクエ軍を降らせた一節は記されていた。
「あ、え〜我がラティス・レクスオールだ! リクエの将兵よ聞け!! リクエ子爵の首は我が軍のハンニバルがあげた。もう戦う必要はない。これ以上無駄な血を流す必要もない。リクエ子爵は敵! されど残された皆に恨みはない。みしるしたるグリフォンに誓う。共に歩もう! そして共にこの大地を駆けよう。我と共にこの大空を羽ばたこう! 罪には問わん! このラティスがベルメール男爵へと掛け合う事を約束しよう! さあ、どうする、今すぐ決めよ!! 死か! それとも生きる道を選ぶのか!」
言った。言い切ってやった。
ラティスの言葉を言い切ったぞ!
これで俺に出来る事は何もない。俺の役目は果たした。
大仕事をやりきった俺には再び全身疲労が襲いかかってきた。
もう、馬に乗っている事すら辛い。
「俺はレクスオール様に!」
「俺もだ!」
「レクスオール様!!!」
「うおおおおおおおお〜」
「レクスオール様〜!!」
リクエ軍からレクスオールに降る言葉が次々にあがる。
ヒヤヒヤしたが、さすがはレクスオール戦記に記されていた言葉だ。
大将を討ち取ったとはいえ、数では比較にならない。
襲いかかって来られれば命がなかったのはこちらだ。
だが史実に間違いはなかったようだ。
「ギルバート、終わったよ」
「敵軍にこのようなお言葉、そして敵軍をも降らせるその器量。このギルバート感服いたしました。まさにグリフォンの化身。まさか本当に天が遣わした……」
ギルバートがブツブツ何か言っているが、そんなことはどうでもいい。一刻も早く休みたい。
あまりにいろいろなことがありすぎて、脳も身体も焼けきれそうだ。
ギルバートさんに後のことを任せて俺はメルダスさんとビルドワースさんに護られて本陣のテントへと移動し、腰を下ろした途端過度の緊張と過労で意識を失ってしまった。
「う、ううん。ここは……」
見慣れない周囲の景色にまだ意識がはっきりとしない。
俺は……
徐々に意識が覚醒すると共に、先ほどまでの非現実的な出来事が脳裏に蘇ってくる。
「レクスオール!」
俺は直ぐに身体をその場から起こす。
「ラティス様、大丈夫ですか? かなりお疲れのようでしたが。ギルバート様を連れて参ります」
そう言ってビルドワースさんがその場を後にする。
やっぱり夢じゃないよな。目が覚めたら全部夢だったらよかったけど、この感じどう考えても夢じゃない。
信じられないことだが、過去のレクスオール戦記の時代に時間跳躍してしまっている。
そうとしか考えられない。
よく思い出して見るとレクスオール戦記にはビルドワースさんやギルバートさんの事も出てきていた。
彼らはもしかしてラティス・レクスオールを守護する五騎聖!?
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