第6話 養護施設と典型核家族の最大の相違点とは?! 2
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「その最大の相違点とは、わしが推察するに養護施設での例えば担当保母と施設長たる園長の関係、それに対する、家族の父母の関係という点であろうな。違うか?」
穏やかに、森川氏が質疑を出してきた。米河氏は、あっさりと応答する。
「ええ、そのとおりです。まずは、私の分析とそれに対する認識を述べさせてください。話はそれからいよいよ、ってことでおいかがですか?」
「異議はない。では、米河君、引続きお願いします」
かくして米河氏は、先程の話の続きを論じ始めた。
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そうです。本論点における最大の相違点というのは、実は、保護者と被保護者間にあるのではなくして、保護者間において発生しておるのです。
この度は、典型核家族、私はこの言葉には心底虫唾が走るのですが、「一般家庭」という場所における両親の関係性のほうから、論じます。
こう申しますと、やれ家父長制下の父親がどうのとか家制度がどうこうとか、あるいは家庭における母親への女性蔑視がどうとか、右も左も低能が沸いて出てわめきだすのが相場ですので、そういうノイジーマイノリティーならぬノイジー低能を排除しておかねばなりません。
よってここは、現行の日本国の法令において定められている家族法の精神をベースに、それに基づいて旧厚生省が半世紀以上前に策定した典型的家族像とやらを引合いに出して、検討してまいります。
さて、保護者間における関係性につきまして、少なくとも現行の家族法におきましては、夫婦は対外的に家事において、あくまでも家事においてのみでありまして、それ以外の点については同一性はまったくないのですが、少なくとも家事に関する事案に対しては「連帯債務」を負うことになっております。
当然、この連帯債務というのは、保護者として被保護者たる子の対外的な事案に対しても成立することであります。
例えば、母親は知っていても父親はわしゃ知らんなどという態度はとれないということで、御理解いただきましょう。要は、共同代表ということであります。
しかし、両者をいちいち表記しては何だということで、あくまでも、その両親のうちの一人の名前を書いてそれで保護者とみなしているだけのことですよ。
これに対して、養護施設という場所の保護者間の関係性について。
まず、担当職員、ここは仮に保母とします。保母は、担当児童であるその子の日常生活の面倒を見ますよね。そこには確かに、親子のような関係性は発生しています。
しかし、彼女は、対外的にはその子を代表などしません。
代表するのは、あくまでも施設長です。ここはよつ葉園に倣い、園長とします。
つまり、その子の保護者は一人しかいない。それも、あからさまなほど明確に。
園長が、その子の保護者なのです。
会社の代表者が、例えば「米河企画株式会社 代表取締役 米河清治」、
あるいは今どきの合同会社なら、「米河クリエイト合同会社 代表社員 米河清治」
と表記されるような形で、何と、入所児童の保護者は対外的に示されます。
米河清治という入所児童がいるとして、その保護者は、園長たる森川さん。
米河清治の保護者は、「よつ葉園 園長 森川一郎」となるわけです。
ここまでは、例示しつつ、その実態を分析して述べて参りました。
述べながら思いましたが、しかし、恐ろしい相違点であることが肌身を通じて染み込むかのように感じられましたよ。
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