挿話12 セシリアが生きていた事を知る第二王子ルーファス
夜の酒場で短剣使いの男にセシリアを捜すように依頼し、出発してから数日経った。
予定では、今日の夜に戻って来るはずだ。
とりあえず俺が捜しに行っている事にする為、宿屋暮らしをしていたが、今晩でそれも終わり、明日には王宮へ戻れそうだ。
「しかし問題は、セシリアをどう扱うかだな」
父は土の聖女であるセシリアと俺を結婚させようとしている。
というか、それが当たり前だと言い出しそうな程だった。
だが俺は、真実の愛をオリヴィアと育んでいるのだ。
最近は、セシリア探しの為に会う時間が作れなかったが、俺に会えない寂しさで泣いていなければ良いのだが。
ひとまず、セシリアを王宮に仕える聖女とし、オリヴィアを本妻――まぁ時々セシリアの相手をしてやるくらいは構わないが――というのがベストなのだが、それが通るだろうか。
そんな事を考えていると、
「ルーファス様! 船が見えました!」
「おぉ、やっとか! さて、これで俺様も、堂々と王宮へ戻り、愛しのオリヴィアの許へ行く事が出来るな」
騎士団の船がやって来た。
船が着岸し、船員たちが慌ただしく動き回る中、短剣使いの男とその仲間が降りて来た。
騎士たちの前で大っぴらに話す事が出来ない為、人気の無い所へ連れて行き、話を聞く事に。
「よくぞ、未開の地ジャトランから戻った。それで、セシリアはどうしたんだ?」
「……その前に聞きたい。アンタ、セシリア様を捜し出してどうする気なんだ?」
「セシリア様? 一体どうしたのだ? あの女に会ったのか?」
「聞いているのはこっちだ。セシリア様をどうするんだ?」
「どうもしない。これまで通り、王宮で過ごしてもらうだけだが?」
こいつらに一体何があったんだ?
たった数日で、目つきが大きく変わっている。
何というか、以前は金の事だけを考え、いかに儲けるかと言う商人のような鋭い目だったのが、今は怯える小鹿のようで、警戒の色が強い。
ジャトランで相当苦しい目に遭ったのだろうか。
「……まぁいいや。とりあえず、俺たちは仕事を降りる。逃げ出した俺たちを見つけた女神セシリア様が、二度にも渡って助けてくださったおかげで、こうして帰って来れた。悪いが、命の恩人であるセシリア様を捕らえるような事は出来ないな」
「セシリアに会ったのだな!? 生きていたのか!」
「当然だ。言っておくが、捕らえる事が出来ない理由は、命の恩人である事以外に、セシリア様の力が強すぎる。ハッキリ言わせてもらうが、仮に騎士団を派遣したところで勝てないと思うぜ」
「ふっ……何を言っているんだ? セシリアは、ただ土の魔法が得意なだけの女だろう。何故、あんな奴の事を女神などと呼ぶのかは知らぬが、俺様や騎士団が負けるだと? お前は一体何を言っているんだ?」
「神の遣いだよ。セシリア様は絶大な防御魔法と植物の育成魔法をお使いになられ、そのセシリア様に仕えている神の遣いたちは、ジャトランの魔物たちが一目散に逃げだす程の力を持っている。騎士団でライトニング・ベアが倒せるかい? そういう訳で、俺たちはここまでだ。じゃあな」
ライトニング・ベア? 聞いた事の無い魔物だが、要は熊だろ?
むしろそんな魔物如きに負ける訳がないではないか。
「待て! お前たちが仕事を降りるのはわかった。だが、セシリアの場所を教えろ」
「……教えても良いが、忠告はしたからな? それと、あくまで俺たちは、そこでセシリア様に助けていただいたというだけであって、どこで過ごされているかまでは知らないぞ?」
男たちからセシリアに会ったという場所を聞き……とにかくセシリアは生きていた。
だが、男二人ではダメか。
魔物が相当強いようだし……かなり嫌だが、奥の手を使うしかないか。
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